父親からの叱責でひきこもる
大学を中退したことで、父親は大激怒。顔を合わすたびに、大声で怒鳴られることが続いたため、健さんは徐々に部屋にひきこもるようになった。
それでも大学中退後、しばらくは短期バイトを繰り返していたが、20代の半ばの頃、バイト先でトラブルがあり、健さんは叱責を受けた。人前で怒られたことにショックを受けた健さんは、次のシフトに出られなくなった。
その後、アルバイト先に連絡をしないまま、アルバイトを辞めてしまう。その結果、働くこともせず、自宅に引きこもりがちの生活を続けることになってしまった。
月日は流れて。
30代半ばを迎えた頃、関係性を修復できないままだった父親が他界した。父親が健在のときには、リビングに降りられなかった健さんだが、父親がいなくなったことで、母親と一緒に食事が取れるようになった。
父親がいなくなったことで、生活が困窮するのではないかと心配した健さんは、母親に家にあるお金のことを尋ねてみた。「貯金は2300万円くらい」と聞いた健さんは、「貯蓄が全部で2300万円ということは、母親が死んだ後は親のお金だけで食べていくのは無理そうだ」と感じたという。
司法書士にチャレンジすることに
貯蓄額を聞いて、将来のことを真剣に考え始めた健さんは、母親を促す形で筆者の事務所に相談に訪れた。相談時は母親よりも、健さんのほうが積極的に質問をするほど。家計状況を聞き取ったところ、吉本家の家計収支は、月々の赤字に加え、家電の買い替え費用や家の修理費用などの特別支出を含めると、毎年で80万〜90万円の赤字が出ていることがわかった。
年間80万~90万円の赤字は、平均余命が10数年の母親の人生だけであれば、持っている老後資金(母子の貯金は計2450万円)でなんとか足りそうだが、それほど余裕があるわけではない。また母親に介護が必要になると、資産は底を突く可能性もある。いずれにしても、健さんの生活まで支えることはできないという現実を数字で確認することになった。
健さんが働かないままでは、生活設計が立たない現実を確認したうえで、健さんに仕事についての考え方を聞いてみた。すると、健さんからちょっと意外な発言をした。
「昔から司法書士の仕事をしてみたいと思っていました。司法書士というのは、具体的にはどうしたらなれるんでしょうか」
「なぜ、司法書士の仕事に興味を持ったのですか?」という私の問いかけに対して、「自宅が借地で、親のモノではないということから、親が死んだら追い出されるのかなどと思っていました。実際には、地代のほかに更新料を払えば僕も住み続けられることを理解しているわけですが。借地を自分のモノにするにはどうしたらいいのかなど、土地の権利のことを調べていて、登記に興味を持ったんですね。登記ができる職業って、何だろうと調べていて、司法書士や行政書士の資格を知りました。
不動産関係の仕事であれば、宅地建物取引士の資格取得を目ざす方法もあるのではないかと言われるかもしれませんが、宅地建物取引士の資格を取って、不動産会社に勤められたとしても、僕は営業の仕事ができないので、働くことには繋がらないんじゃないかと考え、司法書士の仕事を目指そうかと考えています」

