「この家は、私を健康にしてくれるか?」
これらの事例から見えてくるのは、富裕層の意識が「対外的な顕示(Show)」から「内面的な維持(Sustain)」へと、劇的にシフトしている事実だ。
かつては、どれだけ高価な家具を置き、どれだけ有名な建築家に設計させたかという「他人からの視線」が重要だった。しかし今は、いかに自分の細胞を若返らせ、いかに脳のパフォーマンスを維持できるかという「自分自身の機能」が、豊かさの指標となっている。
67億円の睡眠ハック住宅も、ドクター付きマンションも、長寿のための住まいも、共通しているのは、家を「休息の場」を超えて、「能力開発の場」と捉えている点だ。
彼らにとって、最大の資産は金融商品でも不動産でもなく、「自分自身の肉体と頭脳(人的資本)」である。ビジネスの最前線で戦い続ける彼らにとって、病気や老化によるパフォーマンスの低下は、数億円の損失に直結する最大のリスクだ。だからこそ、そのリスクを最小化してくれる住まいには、天井知らずの金額を投じる。
これからの時代、不動産の価値は「駅からの距離」や「築年数」だけでは測れなくなるだろう。「その住まいが、居住者の寿命をどれだけ延ばし、パフォーマンスをどれだけ高めてくれるか(ROI=健康投資対効果)」。それが、資産価値を決定づける最も重要なファクターになっていくはずだ。
あるシリコンバレーの投資家が私にこう言ったことがある。
「フェラーリは買い替えられるが、私の体は買い替えられない。だから、車は中古でもいいが、住む場所だけは、私の細胞にとって最高のものでなければならないんだ」
住まいは、その人の美意識を表現する美術館から、その人の生命力を拡張する「装置」へと進化した。
もしあなたが、次の住まいや投資先を考えているのなら、「この家は、私を健康にしてくれるか?」という視点で問いかけてみてはどうだろうか。
そこには、これまで見えていなかった、新しい価値と未来が広がっているかもしれない。

