ラグビー界の人間がプロ野球組織を指導

転移力の本質が「新しい環境をじっくりと理解し、柔軟に適応していくこと」だとすれば、私(中竹)自身もその試練に直面したことがあります。

プロ野球(NPB)の某球団でリーダーシップやコーチングなどの研修に関わった当初、コーチや選手をはじめ、スタッフ関係者からの言葉は厳しいものでした。

「この人、誰? 野球知ってるの?」
「ラグビーのあんちゃんが何しに来てんの?」

関わった当初は、不信感を表に出して彼らは素直に思ったままの疑念を言葉にしてぶつけてきました。

こんなとき、あなたならどう対応しますか。自分の正当性を主張しますか。それとも別のアプローチを取りますか。

ラグビーボール、野球ボール
写真=iStock.com/RichardMisters(左)、EHStock(右)
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彼らが斜に構えるのは当たり前

私が選んだ彼らへの回答は、「素直に思うまま、正直なスタンスでいてください。皆さんの不信感や不満・不安、戸惑い、面倒なことをお聞かせください」とお願いする姿勢でした。

そして、彼らのそのときの正直な言葉に対して私はできるかぎり真摯に向き合い、「同感です、おっしゃる通りです」と謙虚な姿勢になることでした。彼らの立場からすれば、その態度は当然だと思ったからです。

ラグビーを教えてきた人間がプロ野球の選手やコーチを相手にリーダーシップやコーチングの研修をするわけです。しかも彼らは「野球というのはこういうものだ」との思いを強く持っています。日本で最も人気のあるスポーツでプロの世界が構築されている人たちに、プロとしての心構えのようなことを指導しようとするわけですから、彼らが斜に構えるのは当たり前のことでしょう。

「すみません、確かに野球について詳しいわけではないですが、この問題について一緒に考えてくれませんか」という姿勢です。

そんなわけでNPBに関わり出した当初は研修が思うようにいかず、試行錯誤しながらの講義でした。