「マネジメント」の経験は転移できる
転移力とは、実は器の柔軟性を示すものです。固定的な形の器では、中身を別の器に移すことはできません。しかし、柔軟に形を変えられる器なら、どんな環境にも適応できる。
「多様なメガネ」を思い出してください。一つの視点に固執する人は「この業界だから」「この専門だから」という単一のメガネしか持っていません。しかし、器の成熟した人は状況に応じてメガネを使い分け、「別の角度から見れば応用できる」という新たな視点を生み出せるのです。
近年のプロスポーツ界でも、この転移力の重要性が認識されています。
プロチームの経営者が違う競技のチームに移って成果を出す事例が増えているのです。野球のGMからサッカークラブの経営者へ、バスケットボールのディレクターからラグビーチームへの移籍など、競技の枠を超えた転移が起きています。
ただ、ここで転移できるのは「マネジメント」の経験であって、専門技術そのものではないことを申し添えておきます。職人的な専門技術は、その場以外では応用が効きにくいからです。
さて、転移力を持つ人と持たない人の違いは何でしょうか。
「スポーツだからできる」「この業界だからできる」。そう考えて可能性を閉ざしてしまう人がいる一方で、「違う視点で見れば応用できるはずだ」と考える人もいます。この違いこそが、器の柔軟性の違いを表しています。
「転移力」のあるリーダーがしていること
私(中竹)が行うリーダーシップ研修では「転移力」に注力しています。受講者の方々がこれまで発揮してきたパフォーマンスを別の場で転移するときに、どのようなことに配慮すればよいかをスポーツを例に話すことがあります。
その場以外に応用が効かないと思うスキルでも、別の視点で応用を効かせることができる人は「転移力」が高い人だといえ、自分の器を磨くことにポジティブな印象を受けます。
ただし、気をつけなければならないのは、転移力を発揮しようとする場合、そこには自分の成功パターンの罠があることです。あくまで、すべての事象は個別具体的なものであり、それは常に流動的である中で私たちは生きています。過去の成功にとらわれず、新しい環境をじっくりと理解し、柔軟に適応していく。それこそが、真の転移力だといえるでしょう。

