クオリティ戦略を支えるイノベーション基盤
スイス企業のクオリティ戦略を支える重要な役割を果たしているのがイノベーション環境である。実はスイスは、各国のイノベーション度をランキングしている、グローバルイノベーション指数(GII)で10年連続世界1位になるほどの、イノベーション先進国だ。
イノベーションを支える環境の例が、スイス・イノベーション・パークという半官半民の組織だ。この組織はスイス国内に複数のイノベーション拠点を設置、それぞれ異なる研究領域を担当しながら、国内外企業とスイスのトップ大学を巻き込みイノベーション・エコシステムを構築している。
この活動をスイス全土で組織化しているだけでなく、日本など海外にもサテライト拠点を整備しているところにスイス独自の特徴がある。
またスイス政府のイノベーション推進組織であるイノスイス(InnoSwiss)が、スイス企業の研究開発資金の最大50%を大学の研究機関経由で援助する、といった仕組みも整備されていて、特にスイスの中小企業にとっては、大学とタッグを組んでの研究開発資金が得られるということで非常に重宝されている。
ただし、このような受け皿や補助金制度であれば、スイスだけでなく他国にも存在している。スイスがイノベーションランキングで10年連続世界1位になる最大の理由は、高付加価値品を主戦場にするスイス企業の存在自身にあるとみている。
つまりスイス企業の「クオリティ戦略」こそが、イノベーションを促す源泉であり、そのイノベーションがスイス企業の「クオリティ戦略」を支えるという、相互補完関係にある。
研究開発資金も潤沢
どういうことか。高付加価値品に集中している企業は研究開発資金も潤沢に持っている。そして、世の中にはない製品・サービスを生み出すことや、最高品質への要求水準は、汎用品を作る企業と比べれば必然的に高くなる。
それを象徴する事例を紹介しよう。スイス中部のフリブールという街にある、iPrint研究所である。
この研究所では、インクジェットにまつわる世界最先端の研究を行っていて、インクの材料から、ノズルヘッドや制御ソフトウェア、実際のプリントに至るまでの幅広い領域を研究対象としている。
同研究所では、スイス企業のR&Dの初期段階を支援するケースが多く、インクジェット技術を使った新たなプリントの可能性の模索(2Dおよび3D)、そして既存の技術で対応が難しい場合は新技術の開発を行っている。
日本でも地場産業のR&Dを支援する公設試験研究機関(公設試)はあるが、iPrint研究所はフリブール州の地場産業を支援するというよりは、非スイス企業も含めてインクジェットプリントに関心がある企業すべてを潜在的な研究パートナーと考えている。
また同研究所はリサーチパーク的な機能もあり、敷地内にユーザー企業が入居できるスペースも準備し、リサーチエコシステムを拡大することを意図している(日系メーカーも同研究所敷地内に入居している)。

