ROEが30%を超える高収益の化学製品企業

また建設・インフラ業界だけでなく、自動車業界ではBMWの7シリーズに採用されている。各国の経済成長に応じてインフラ、建築、工業、自動車……というように事業展開を行った結果、顧客業界は多種多様となっており、世界70カ国以上に製品を展開している。

化学製品という、どちらかというと価格競争に巻き込まれがちな領域にいながらも、シーカはROEが30%を超える高収益企業である。それを可能としたのが徹底したコアコンピタンス(防水などのシーリング)の理解とクオリティへのこだわりだ。

シーリング、接着、制振といった技術を磨き上げることで、その技術が活きる領域の選択と集中を徹底し、得意領域で勝ち切るということを継続した結果、高収益性と同時に複数市場で製品を提供するに至った。これが事業ポートフォリオの安定にも寄与している。

香料メーカーであるジボダンやフィルメニッヒは、食品に香りを添加するフレーバーと、食品以外に香りをつけるフラグランスを手掛けている。両社に共通する特徴として創業以来の研究開発への積極投資が挙げられる。

成分の研究をする科学者
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売上の約1割程度の予算を研究開発に充てており、ノーベル賞受賞者を雇い入れるなど、研究開発が成長の源泉となっている。

たとえば、近年ではSDGsの観点で代替タンパクの開発が世界的に行われているが、フィルメニッヒもAIを活用して非動物由来の原料から自然な肉の風味を実現するなど、時代の要請に応じた研究開発を積極的に行っている。

インテルやシマノと類似する

また最終製品(食品、化粧品、香水など)は景気の影響を受けるのに対し、これら2社の香料はあらゆる最終製品に使用されるため、景気の変動に対して強い。

ジボダン社がインタビューを受けたある記事によると、「食べる、飲む、体を洗う、掃除するといった活動の8割をビジネスとしている。不景気が大きな問題になったことはない」と同社の幹部がコメントしている(Swissinfo、2012)。実際に同社の直近約20年の業績は堅調推移している。

隠れたチャンピオン企業のクオリティ戦略は、PC業界における(かつての)インテル、あるいは自転車のコンポーネンツを作るシマノと似ているところがある。

いずれも最終製品(PC、自転車)のキーコンポーネントとして、なくてはならない存在であり、「インテル入ってる(intel inside)」が高品質の代名詞であったように、スイスの隠れたチャンピオン企業も、最終製品にとってなくてはならない存在として、高付加価値を追求している。