小国スイスの競争力の源泉は何か。高付加価値を主戦場とするスイスの企業には大企業のほか、その多くがニッチな市場を対象とする「隠れたチャンピオン企業」と呼ばれる企業群があるという。関山健、鹿島平和研究所 編著『稼ぐ小国の戦略』より紹介しよう――。

※本稿は、関山健、鹿島平和研究所 編著『稼ぐ小国の戦略』(光文社)の一部を再編集したものです。

チューリッヒ湖を背景にはためくスイスの国旗
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スイスの「隠れたチャンピオン企業」の実態

スイスは人口880万人ほどの小国だが、一人あたり名目GDPでルクセンブルクとアイルランドに次ぐ第三位の稼ぐ力が高い国だ。

スイスには世界的によく知られた大企業(例:ネスレ、ノバルティス、ロシュ)や、スイスネス(スイスらしい)な企業以外にも多くの企業が存在している。それらの企業の中で、「隠れたチャンピオン企業」と呼ばれている企業群がいる。

これはハーマン・サイモンが名付けた企業群で、「売上高が40億ドル以下」かつ「世界市場で3位以内か、地域市場でシェア1位」の企業を指し、多くはニッチな市場を対象としている(サイモン、2012)。

スイスの隠れたチャンピオン企業の例としては、建設物・工業製品用化学製品を作るシーカ(注:売上高はすでに40億ドルを大きく超えている)、香料メーカーで世界シェア上位のジボダン、フィルメニッヒといった企業がある。

ともに消費者の目にはほとんど触れることがない、まさに「隠れた」チャンピオン企業である。

隠れたチャンピオン企業のクオリティ戦略は、高付加価値事業領域へのシフトや、ブランドを基盤にした特定商品の高級セグメントに注力するのではなく、特定の機能(例:防水、香り)で高付加価値を追求しつつ、複数のアプリケーションを見つけて、「キーコンポーネント」になることを目指す。

スイスのツーク州に本社を置くシーカは、1910年にスイスのゴッタルドトンネル建設時に防水材を開発して以来、シーリング、接着、制振といった技術を強みとしている。日本でも1934年に阪急の屋上防水工事、近鉄のトンネル防水工事を手掛けている。