ラーメン3杯でも、どら焼き3個でも大丈夫
では、糖尿病とアルツハイマー型認知症は、どのようにつながっているのでしょうか。それを読み解くカギは「インスリン」にあります。
糖質を摂って血液中にブドウ糖が増えると、膵臓からホルモンの一種であるインスリンが分泌されます。そのインスリンは、血液中に余っているブドウ糖に働きかけ、グリコーゲンや中性脂肪に変えて、肝臓、筋肉、脂肪細胞などに貯蔵します。
こうしたインスリンの働きがあるおかげで、健康な人がたとえラーメンを3杯食べても、どら焼きを3個食べても、血糖値が上がり過ぎずにコントロールされます。
一方で、脳においては、インスリンは神経伝達物質として重要な働きをします。さまざまな情報が脳内ネットワークをリレーするように伝えられていくときに、インスリンが伝達物質として働くのです。
脳はとても大事な臓器なので、おかしな血液成分が入り込まないように「血液脳関門」というバリアがあります。
そのため、インスリンの働きが悪くなる「インスリン抵抗性」が起きると、インスリンがここを通過しにくくなります。
ただし、脳でもインスリンはつくられます。これまで、インスリンは膵臓からのみ分泌されると考えられていましたが、脳の海馬でもつくられることが最近になってわかってきました。
健やかな脳を保てている人は、膵臓由来のインスリンも海馬由来のインスリンも使いこなしながら、脳内ネットワークを維持しているものと思われます。
糖質の摂り過ぎでインスリンの働きが悪化
インスリンはとても重要なホルモンですが、たくさん出ればいいというわけではありません。インスリンが大量に分泌されて血中インスリン濃度が上がると、がん細胞を増殖させるなど、体にさまざまな悪影響を及ぼすことがわかっています。
また、不安感が増したり、集中力が低下したりといった、脳への悪影響も指摘されています。
つまり、少ない量で、しっかり働いてくれるのが理想。インスリンは、少数精鋭であることが大切なのです。
ところが、糖質を摂り過ぎると少数精鋭が崩壊していきます。
先にも述べたように、ラーメンを3杯食べても、どらやきを3杯食べてもインスリンがしっかり働いていれば血糖値が上がりすぎることはありません。でも、調子に乗って糖質を摂り過ぎていれば、やがてインスリンの働きが悪くなっていきます。
インスリンの働きが悪くなり「インスリン抵抗性」が起こると、大量を用意するしかありません。
しかし、働きの悪い兵士がたくさんいても役立たずなように、インスリンをたくさん分泌してもあまり効果が発揮できなくなります。
すると、ブドウ糖の処理がうまくいかなくなり、血糖値のコントロールが利かず糖尿病を発症します。
加えて、インスリン抵抗性が起きると、膵臓でつくられたインスリンが血液脳関門を通過しにくくなり、脳に届く量が減ります。それによって、脳内ネットワークの情報伝達が悪くなるのです。
さらに、インスリン抵抗性は脳でも起きます。それを「脳インスリン抵抗性」と言います。
膵臓からのインスリンも届きにくく、脳由来のインスリンも働きが悪くなる。この状態に陥ることが、「糖尿病に罹る人はアルツハイマー型認知症にもなりやすい」と言える根拠です。
なお、インスリン抵抗性が起きれば、脳内ネットワークの情報伝達が悪くなるのですから、たとえアルツハイマー型認知症に罹らないとしても、脳の機能維持面では大問題だということがわかるでしょう。

