コロナで客が消え、安売り復活が裏目に

2013年頃から始めた品揃えの見直しは少しずつ顧客にも浸透し、業績も徐々に上向いていった。2019年6月、43歳で6代目社長に就任した。

しかし、社長就任から1年も経たずに今度はコロナ禍が店を襲い、店から客が消えた。

コロナ禍では、巣ごもり需要を取り込んだスーパーが業績を伸ばした一方で、ハルタでは大幅な客数減に見舞われ、売上は激減した。圧倒的な環境変化になす術もなく、店は赤字に転落。春田さんは責任を取る形で経営の第一線から身を引くことになった。

春田さんから経営を引き継いだ人物は、高価格帯の商品を売場から撤去し、特売やポイントカードなど以前のような安売りを行って客足を戻そうとした。しかし、結果は買い上げ単価が下がり、利益率は低下。経費も増加して赤字幅はさらに拡大した。売上は下がり続け、ひどい月は約600万円の赤字を出した。

「もはやこれまで」と再建は断念され、銀行との間で会社売却についての協議が始まった。銀行に呼び出された春田さんは絶体絶命の状況の中で、会社の存亡をかけた提案をした。

「1年待ってください。1年間、私に思い切りやらせてもらって、それで駄目なら売却してください」

高付加価値の商品を店頭でマイクを握って猛アピール

この提案を銀行が承諾し、2023年7月、春田さんは現場に戻った。売場から撤去されていた有機野菜などの仕入れを再開し、品揃えを以前と同じ高付加価値の商品が中心の構成に戻した。

その上で自らハンドマイクを持って店頭に立ち、「以前のハルタに戻りました!」と道行く人に呼びかけ、売り込みを仕掛けた。

「水曜日と土曜日を国産原料・無添加にこだわった『自然の味そのまんま』ブランドの全品2割引の日にしました。加えて、月曜日と金曜日はハルタの売り出しです。なので、週に4回、店頭に立ってずっと呼び込みをしていました。加えて試食も出すようにしました。なくなったらバックヤードで追加を準備して、また店頭で呼びかける。それを2年間続けました」

効果はてきめんだった。

例えば、国産トマト100%のケチャップは537円(税込み)。一般的なケチャップの約2倍の価格である。国産の大豆と小麦粉を使用し、杉樽で仕込んだしょうゆは2200円(税込み)。通常品の約3倍だ。こうした商品が次々に売れていった。

一度経営を離れてから8割ほどに減っていた売り上げを戻すことに成功し、さらに月ごとに売り上げを徐々に伸ばしていくことができた。崖っぷちの1年間の最終結果は売上前年比108%。何とか黒字転換を果たし、会社売却の危機を免れた。

「さつま黒酢ぶり」「鯛一郎クン」など、こだわりの生魚をおろした刺身コーナー
筆者撮影
「さつま黒酢ぶり」「鯛一郎クン」など、こだわりの生魚をおろした刺身コーナー
在来種に近い黒豚「短鼻豚」を原料に使用した、食品添加物無添加の冷凍加工商品
筆者撮影
在来種に近い黒豚「短鼻豚」を原料に使用した、食品添加物無添加の冷凍加工商品
国産・食品添加物無添加にこだわった40種類以上の海藻加工品が並ぶ「乾物マルシェ」
筆者撮影
国産・食品添加物無添加にこだわった40種類以上の海藻加工品が並ぶ「乾物マルシェ」
熊本県産の自然栽培米(有機JAS認証)。自然栽培の米がこれほど積まれているスーパーは極めて珍しい
筆者撮影
熊本県産の自然栽培米(有機JAS認証)。自然栽培の米がこれほど積まれているスーパーは極めて珍しい
九州産米粉100%使用のグルテンフリー&ヴィーガンの冷凍パン
筆者撮影
九州産米粉100%使用のグルテンフリー&ヴィーガンの冷凍パン