鹿児島出身・稲盛和夫の経営哲学を叩きこんだ

リストラ後のハルタで働きながら、春田さんは経営者としての学びを深めていった。鹿児島大学に鹿児島出身の稲盛和夫の名を冠した「稲盛アカデミー」が創設されることを知り、申し込んだ。

「稲盛さんの考え方は『利他』です。自分に向いていなくて、外に向いている。すべて世のため、人のためなんです。自分は後回しで、常に世のため人のため。それが巡り巡って自分に返ってくるというスタンス。そこに強く惹かれました」

稲盛アカデミーでは、稲盛氏の人生について学んだ。さらに、京セラフィロソフィ、会計学、アメーバ経営など、吸収できるものはすべて吸収し、ハルタの経営に活かした。稲盛氏が主宰する経営者勉強会「盛和塾」にも入会し、直接教えを請うことができた。

バックヤードの通路に掲げてあるハルタの経営理念とスローガン
筆者撮影
バックヤードの通路に掲げてあるハルタの経営理念とスローガン

妹の死と子どものアレルギーから「食の安全」を考えるように

経営者としての学びを深めていく一方で、春田さんがハルタの商売の在り方を大きく変えることになった悲しい出来事が起きる。妹が「膠原病こうげんびょう」という免疫障害の病気で亡くなったのだ。34歳の若さだった。

春田さん自身も以前は重度のアトピー性皮膚炎で、子どもにもアレルギーがある。妹さんの死をきっかけに、春田さんは食べ物がそうした病気や体質に及ぼす影響を考えるようになった。

また同じ頃に、化学肥料や農薬を使用せずに米を育てる「合鴨農法」の田植え体験会に子どもを連れて参加した。これに春田さんは大きな衝撃を受けた。

「農薬、化学肥料によって、田んぼの虫が全部死んでいく。でも稲だけは生きていく。農薬を使った水が川に流れ込み、海に流れ込んで、それによってさらに他の生き物にも悪い影響を与える。そうではなくて、他の生き物と共存しながら私たちも生きていく――そうした農業、食の在り方を学びました。

私自身のアトピーや子どものアレルギー、妹の死も、こうしたことが原因なのかもしれない。それに気づいて、食べ物について改めて勉強を始め、少しずつ『食の安心安全』や『健康』に配慮した品揃えに変えていきました」

それまでのハルタは、チラシ特売やポイントカードなどで集客するいわゆるごく普通の“安売りスーパー”だった。春田社長はそこからの脱却を図った。

合鴨農法で栽培した「合鴨米」を皮切りに、有機農産物、国産原料・食品添加物無添加にこだわるブランド「自然の味そのまんま」(こだわりの味協同組合)など、健康に配慮した高付加価値商品の取り扱いを増やしていった。

オーガニックスーパーに舵を切るきっかけになった「合鴨米」を紹介する動画
オーガニックスーパーに舵を切るきっかけになった「合鴨米」を紹介する動画(ハルタのInstagramより)
 「自然の味そのまんま」の商品がいっぱいに詰まった冷蔵ケース
筆者撮影
「自然の味そのまんま」の商品がいっぱいに詰まった冷蔵ケース
グロサリーコーナーでも「自然の味そのまんま」を大きく展開
筆者撮影
グロサリーコーナーでも「自然の味そのまんま」を大きく展開