「がんばり損」が発生する2つの原因

まず、税金側の理由から見ていきましょう。会社員の所得税は「給与所得控除」で、額面年収から一定の金額を差し引いて計算されます。年収が上がるほど控除額も少しずつ増えていきますが、850万1円以上になると控除額は一律195万円で上限に達します。

つまり、年収850万円を超えると「控除が増えない」状態になり、昇給分がほぼそのまま課税所得に乗りやすくなるわけです。このため、850万→900万円の帯では手取りの伸びが鈍くなるのです。

次に社会保険側の理由をみてみましょう。健康保険や厚生年金は、実際の給与額ではなく「標準報酬月額」の等級表にもとづいて保険料が決まります。保険料率は一律ですが、等級は一定の幅で上がるわけではありません。そのため、同じ50万円の昇給でも、等級が2段階アップすることもあります。

昇進しても「残業代0」でむしろマイナス

今回のシミュレーションでは、年収500万→550万円、650万→700万円、750万→800万円の3カ所で社会保険の等級が2段階上がっていました(図表3)。

【図表3】タイプ別「がんばり損」が起きる年収帯
筆者の記述を基に編集部がGeminiで作成

この年収帯では、昇給50万円に対して手取りの増加は6割程度にとどまり、残りが社会保険料を中心とした負担増に消えてしまいます。これが、いわば「社保等級ジャンプ型」の“がんばり損”ゾーンです。

「これだけ引かれるなら、昇給しても意味がない」と投げやりな気持ちになる方もいるかもしれません。実際に「管理職に昇進したら昇給したけど、残業代がゼロになって手取りが変わらない(むしろ減った)」という声もよく耳にしますし、私自身も似たような経験をしました。