新入社員の行動を引き出す「許可」の言葉
特に注目してほしいのが、新入社員の「行動」を促した最後の言葉です。
「後ほどゆっくりとご覧いただき、思い出の写真を撮ってみてください」
「そして、誰のクルマが一番カッコよかったかぜひ後で教えてください」
想像してみてください。厳粛な入社式で、新入社員が自らスマートフォンを取り出して写真を撮るという行動は、なかなか勇気がいるものです。「失礼にあたるのではないか」と、多くの人がためらってしまうでしょう。しかし、リーダーがこうして明確に「許可」を与え、行動を促すことで、その心理的なハードルは一気になくなります。
また、単に「投票してください」と指示するのではなく、「誰のクルマが一番カッコよかったかぜひ後で教えてください」と、あくまで個人的な感想を求めるような、柔らかい表現を使っています。
しかも、新入社員自身のスマートフォンで撮影させることで、その写真は思い出として新入社員のスマホに残ります。彼らは自分のスマホを見るたびに強い当事者意識(自分ごと化)を持つことができるのです。
「この会社の一員になった」自覚を刻み込む
さらに、このスピーチが巧みなのは、なぜ役員たちの愛車を公開するのか、その目的や想いもきちんと伝えている点です。
「今日が大切な日だからこそ、その思い出の真ん中にはクルマがあってほしい。クルマ屋の一員となったことを感じてほしい。そんな想いを込めて、私たちの愛車で皆さんをお迎えすることにいたしました」
この一言があることで、クルマの展示は、単なる演出ではなくなります。クルマを「見せるため」ではなく、新入社員を「迎えるため」の行動へと意味づけされるのです。その結果、新入社員は「やらされている式典」ではなく、自分が「迎え入れられている式典」として、その場を受け取る。「私はこの会社の一員になったのだ」という自覚も刻みこまれていくことでしょう。
つまり、行動の背景にある想いを言葉にすることで、相手の「自分ごと」に変化させることもできるのです。これこそが、人の心を動かすスピーチの本質です。

