築地では「そんなまがいもの売れないよ」
一方、トビウオの卵の加工品を製造・販売する水産加工会社は関東にもある。神奈川県相模原市に本社を置く「大栄フーズ」(1973年設立)は、ペルー産の原料を使った「とびっ子」を国内外に向け、大量に生産している。
岡康史社長によると、とびっ子を生産し始めたのは40年以上前。当時は台湾産の原料を使っていたが、原料価格の上昇などにより十分な量が確保できなくなったことで、10年ほど前から主に南米・ペルー産の原料に切り替え、生産を増やしている。
同社でも、北海道での根強い需要を受けて道内のスーパーなどへ出荷しているが、供給の多くは関東だ。東京を中心に、回転寿司チェーンやスーパー、外食チェーンなどと取引しており、人気は高まる一方だそう。
岡社長いわく、数十年前の生産開始当初は、東京・築地などの魚市場で「そんなまがいものを持ってきても売れないよ」などと、とびっ子への反応は冷ややかだった。江戸前の寿司屋では、「イクラとカズノコがあればいい」と、取り付くしまもない状況だったという。
かつてノルウェーサンーモンが日本へ初上陸した際、「こんなのサケじゃない」と魚のプロ達から門前払いされたのと同様に、とびっ子も関東では苦いデビューだったようだ。
ところが、北海道で消費が定着していたことに加え、他地域での出荷が増えたことで、関東を中心とした大栄フーズの地道な販売戦略にも少しずつ光明が見え始める。回転寿司の色鮮やかなネタとして、子供や女性を中心に人気となり、「その他の魚卵」から飛び出して次第に認知度を高めていった。これもサーモンがたどった道のりとよく似ている。
中国や韓国では日常的に料理に使われる
とはいえ、ほかの魚卵に比べて歴史が浅いことや外国産の原料で作ることなどから、とびっこは北海道を除いて一般にはなじみがやや薄い存在だったように思う。
だが、今やその人気は海外でうなぎ登りだ。欧米などでカリフォルニアロールの具材となっているほか、パンやクラッカーに載せて食べる「カナッペ」に使われる。そしてそれ以上に、中国や韓国での日常的な需要は大きい。
かね徳や大栄フーズによると、中国では鍋の具材やシュウマイの上に載せたり、魚のすり身など練り物に利用されており、韓国ではビビンバや「チュクミ」(タコや野菜をピリ辛のソースで炒めた料理)に使われる。それぞれ自国料理の食材に加えられて大量消費されるようになったことで、海外での需要が伸び続けているのだという。


