捨てられる卵の有効活用から始まった

かね徳は、1968年にカズノコの代用として、インドネシアでトビウオの卵を使った原料開発をスタートさせた。同社によると、トビウオ漁が盛んなインドネシアのマカッサルという地域では当時、トビウオを漁獲して塩漬けにして干すことにより、食用として利用していた。

ただ、同時に回収される大量の卵は、ほとんど捨てられていたため、同社は「トビウオの卵をカズノコのバラコのように活用できないものか」と考え、卵の食用化に乗り出すことにしたのだ。

海面に浮かべた籠の脇に海草などを付けたイカダを設置すると、トビウオは粘膜と一緒に卵を産み付ける。卵は絹糸のような繊維で一体化してしまうため、回収後は手早く乾燥させ、金網を使って1粒ずつばらした乾燥原料を日本へ送り、味付け・着色する。こうしてできた「とびっこ」を、1973年に商品化した。

トビウオを獲るインドネシアの漁船(1968年当時)
画像提供=かね徳
トビウオを獲るインドネシアの漁船(1968年当時)

北海道では古くから人気の食材

とびっこの国内デビューは、かね徳が当初企図していたカズノコの代用ではなく、サケの漁模様との関係が大きかった。開発当時、北海道では今と同様にサケが不漁で、イクラ価格が高騰していた。同社はその代用としてとびっこの製品作りに乗り出したのだ。味付けに苦労したといい、「何十回も北海道へサンプルを送ったが、なかなか採用されなかった」(同社)と打ち明ける。

かね徳本社がある関西では、食材の味付けのベースはカツオ節だが、北海道では馴染みがない。1年半ほど試行錯誤を繰り返し、塩・しょう油漬けにしたことで、道民にようやく受け入れられたという。

こうして、とびっこのしょうゆ漬けが札幌市の中央卸売市場などで大量に取引され、道内各地へ広がった。これを機に同社は、全国販売に踏み切る。今でも北海道では、ごはんにかけて食べるほど、とびっこはメジャーな食材となっている。

同社によると、とびっこの生産量は伸び続けている。後述するが日本以外の需要も旺盛なため、原料価格は上げ基調となった。原料となるインドネシア産の乾燥卵の価格は、14~15年前に1キロ当たり2000~3000円だったが、今は円安もあって同8000~9000円と、3~4倍に上昇したというから大出世だ。