解雇で退職届を書かせる悪質な手口

いま述べたのは、会社がまだ「正攻法」で仕掛けてくる場合ですが、中には不当な解雇や雇止めをしながら、退職届を書かせようとすることもあります。これは非常に悪質なやり方なので注意が必要です。

先ほど述べた通り、解雇や雇止めは、使用者にとってリスクがあります。そこで、悪知恵のある使用者は、口では解雇と言いながら、退職届にサインさせようとする場合があるのです。解雇というショッキングな内容を知らされて気持ちが弱った労働者が、差し出された書面についサインしてしまうということが実際にあります。

これの恐いところは、労働者が後で解雇は無効だと争った際に、自ら退職を選択したかのような書面を証拠として提出されてしまうところです。裁判は証拠で判断されるため、労働者の主張と相反する内容の証拠が出てきては、非常に不利になります。ですから、解雇や雇止めの直後になんらかの書面を出されても、絶対にその場でサインしないようにしましょう。解雇と自主退職は全く違うことを覚えておけば、正確に対応できます。

また、会社に解雇や雇止めを通告された場合は、その証拠を残すことが第一です。解雇であれば、解雇通知書や解雇理由証明書の発行を求めることができます(雇止めの場合でも一定の場合は同じです)。また、解雇を言い渡されている会話を録音することも有効です。なお、この場合の録音は、会話相手の同意を得る必要はなく、秘密裏に行っても、裁判では立派な証拠となります。

無期転換権の行使という切り返し

なお、有期労働契約で契約していた期間が通算で5年を超える場合、無期転換権の行使という強い切り返しが可能です。無期転換権とは、現在の契約は有期契約であるけれど、次から無期にするという権利で、使用者はこれを拒否することはできません(労働契約法18条1項)。権利を行使すると、今の有期契約が終了した日の翌日から無期の労働契約が成立することになります。

たとえば、期間の定めが2年の場合、2回目の更新で通算6年となりますので、更新してその期間に入った瞬間から無期転換権を行使できます(実際に5年を超えて働く必要はなく、通算契約期間が5年を超えればいいのです)。

もしも使用者から次の契約は更新しないと言われたとしても、自分の契約が通算5年を超えているならば、「無期転換権を行使する」と通知すれば、使用者のした雇止めの意味が失われることになります。

会社(使用者)から解雇や雇止めの通知、退職勧奨などをされると、労働者は動揺したり不安になったりするものです。でも、正確な知識を知っておけば、会社の出した書面にすぐにサインしないことでひとまず身を守ることができます。

その後は一人で思い悩むより、専門家に相談することをおすすめします。解雇などのトラブルについては、労働組合や労働者側で労働事件を扱っている弁護士などに相談するといいでしょう。

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