「非創業家」トップリーダーの強み
以上に述べたような構造的な変化が、芸能プロの戦略に如実に表れている。ホリプロは、自社俳優だけで作品ラインを組めるほど主役級の層が厚い。ここに自社IPを持てる映画スキームを重ね、視聴者を取り込むための「棚」の“間口”と“奥行き”を同時に広げている。研音は俳優ブランドの希少性(真裏を走らせても主役が回る層)によって、「棚」そのものの価値を底上げしている。
では、それらを仕掛けているホリプロ・菅井敦氏、研音・冨田賢太郎氏に共通しているものは何か。
彼らは両者とも、創業一族ではない。
ホリプロは創業者・堀威夫から、息子の堀義貴氏へと引き継がれた典型的オーナー企業である。現在も義貴氏が会長として代表権を握っているが、菅井敦氏はオーナー一族ではなく、プロパー社員のルートで代表取締役社長兼COO(=事業運営担当)へと上り詰めた。
一方、研音は野崎俊夫氏による創設から、特定の同族による世襲を経ずに現在の経営体制へ移行した“非同族型”の組織である。冨田氏は代表権こそ持つが、オーナー家出身ではなく、内部昇格の経営者だ。
そんな彼らは、「プロの経営者」として冷静に、ときに冷徹に未来を見極め、合理的に戦略を立てている。
「ジャニーズがいた時代」の終わり
ホリプロと研音の事象の重なりは、偶然ではない。彼らは地上波・配信の力学が不可逆に変わったことを、誰よりも早く“構造”として認識している。芸能界は、確実に新しい時代へ突入しつつある。
これは「ジャニーズがいた時代」とも、『ザ・芸能界』で描かれた“創業者ドン”の支配構造とも、まったく異なる原理だ。いまは、地上波と配信という“動線”の上で、俳優という財産をどう配置するかを合理的に設計できる者が主導権を握る時代である。
テレビ局側も、それを十分に意識して対応する必要がある。そうでないと、芸能プロダクションのしたたかで緻密な計算という渦に飲み込まれるだろう。

