暗黙のルールが崩れ始めた
だが、芸能プロの創業者が亡くなったり、代替わりをしたりすることで、そんな時代も終わりを告げようとしている。
芸能界も新しい世代へ生まれ変わろうとしているのだ。その変化は、従来の“同じ事務所の主役級を同時期にぶつけない”といったキャスティングの暗黙のルールが崩れ始めたことに象徴される。それを端的に示したのが、TBSドラマ「リブート」である。
本作品は、妻殺しの容疑をかけられたパティシエ・早瀬陸が、潔白を証明するために悪徳刑事・儀堂歩の顔に整形(=リブート)し、家族を守るために裏社会と警察の闇へ潜り込んで真犯人を追うサスペンスドラマである。
初回の関東世帯視聴率は13.3%(ビデオリサーチ調べ)。TVer(民放公式配信)では8日間再生数が486万で“歴代最高”を更新、2月1日時点で600万を突破した。地上波でも配信でも、民放ドラマの中で圧倒的に強く、今季トップクラスの作品になっている。
この成功の秘訣は、黒岩勉の脚本のうまさもある(韓国ドラマの三幕構成を忠実に踏襲、伏線を切れ目なく打ち込んでゆく手法など)が、それだけではない。単なる“一人二役”ではなく、物語上の“整形前の早瀬陸”を松山ケンイチ、“整形後の陸(儀堂歩として生きる)”を鈴木亮平が演じることで、視聴者が「別人なのに同一人物」を追いかける構造を成立させた。
ホリプロが打ち出した“禁じ手”
芸能プロは、自社所属の複数の主力俳優を同番組に出演させることを避けてきた。しかし、2022年6月にホリプロの社長に就任した菅井敦は、映像・マネジメント両部門の役員を歴任してきた実務型の経営者として手数を広げている。鈴木亮平、松山ケンイチの二枚看板を“あえて”同じドラマに出すという「禁じ手」に出たのだ。
地上波では、主演級の俳優と売り出し中もしくは今後売り出したい俳優などを組み合わせて出演させる、「抱き合わせ出演(通称バーター)」というシステムがよく採られてきた。だが、主演級を同時に出演させることは、従来は「食い合う」と避けるものだ。
はたして、その勝算はどこにあるのか。
実は、菅井のこの戦略は一貫している。ドラマ「リブート」の例は、タブーを打ち崩し、自社の所属俳優を最大限に活用するという点において、先日発表された「2時間サスペンスドラマ」を映画シリーズ「2時間サスペンス THE MOVIE」として復活させる動きとも地続きである。
姿を消した2時間サスペンスとの共通項
日本のテレビドラマ文化を象徴するジャンルとして多くの視聴者を魅了し、昭和・平成の時代に民放テレビ局で盛んに作られてきた2時間サスペンス。私も過去に幾度となく制作を手掛けた。しかし、今では地上波からすっかりその姿を消した。その理由は大きく2つある。

