バランスが良くてまろやかなムール貝のすまし汁
ムール貝のカレーを早く食べたい。一緒に食べてくれるのは平均年齢50歳ぐらいの飲み食い好き男女4名。料理研究家、料理ライター、焼酎バー経営者などで、味にはかなりうるさそうなメンバーが揃った。
まずはシンプルに昆布とムール貝のすまし汁を作った。水を張った鍋に昆布を火にかけて、洗ったムール貝を入れるだけ。味付けは塩と醤油のみ。この汁、すごくうまい! 全員がほぼ同時に絶賛した。
「化学調味料を入れているんじゃないかと思うほどの濃いうまみを感じますね」
「ムール貝が和のおすましになるなんて……。バランスが良くてまろやかです」
深みを感じるのはやはり昆布との相乗効果だろう。わかりやすいムール貝の旨みを昆布が下支えしているのがわかる。
そして、本命のカレー。ムール貝をワイン蒸しにして、そのスープを使ってカレーを作り、殻を外した身をトッピングした。
どこかで食べたことがある、と筆者は感じた。そば屋のカレーだ。このムール貝カレーにはカツオ節や昆布は入れていないが、海産物のダシを使ったことで共通するものがあったのかもしれない。
「生のピーマンの青々しい香りが貝の優しい味を引き締めていますね」
「黒コショウも必須。貝のうまみと黒コショウの風味がビッタビタに合う!」
「厄介者」を「資源」に変える食の選択
ムール貝の意外なうまみに興奮したメンバーがダシ実験を始めた。上田さんが提唱する「ダシの4象限マトリクス」を参考に、陸の動物である豚や鶏は強すぎると判断し、陸の植物(正確には菌類)であるキノコを加えたのだ。貝、カツオ節、きのこの「3種のうまみ汁」である。
味見したところ、この3つのうまみは一体化しにくいと感じた。かといってケンカもしていない。それぞれが勝手にうまみを発揮している。
「カラフルな感じの楽しい汁ですね」
料理ライターの女性が上手にまとめてくれた。飲みながら、「やっぱり昆布は入れるべきだね」「肉の中でもクジラベーコンなどが合うかもしれない」などの意見が出て、ダシ理解が深まる夜になった。
ムール貝はボイル済みのむき身が安く売られていることが多い。しかし、この貝の真価はダシにあるので、今後は殻付きの生を購入して自宅で蒸したいと強く感じた。繁殖力の強さから厄介者扱いされることもあるが、ホタテの養殖場などで育ったムール貝は貝毒検査を経ることになるので安心して食用にできる。捨てずにどんどん出荷してほしい。店頭で生を見かけたら即買いだ。あなたの選択ひとつで未利用資源が活用され、ひいては東北の地域活性化につながる。





