「損して得取れ」で店を守り続ける
原価は高くなっても、できるだけ値上げしないで、それでも質は維持する。だからこそ顧客も離れないで、商売が続けられる。いわば商売の鉄則なのだが、なかなか難しい状況にあっても、井口さんは守りつづけている。これも、「損して得とれ」の一環である。
ただ、井口さんはPALだけを経営しているわけではない。「有限会社セントラル・ボックス」という会社で社長を務めており、PALの上のマンションもPAL周辺の駐車場も管理している。PALは不動産収入があるから低価格を維持できているのだろうか。
井口さんは「マンションや駐車場の収入があるからやっていけるけどね」と笑いつつ言うが、「それでも、PALだけでぎりぎり黒字は維持できてるんだよ」と語る。つまり、PALの赤字を不動産収入で補填しているわけではないのだ。
PALを経営する井口さん夫婦の涙ぐましい努力が、この価格と周囲の人々から愛される味を守り続けているといえる。
個人経営だと、大きな課題が後継者である。井口さんは69歳だというので、まだまだがんばれても、いずれは自分が中心になっての経営が難しくなるときはやってくる。
「子どもは3人いるけど、誰かに継いでほしいとは考えていないよ。やりたいならやればいいけど、無理して継いでくれる必要はない。私がやれなくなったら、大手コンビニチェーンとかドラッグストアに場所を貸してもいいしね。そういう話が、いまもあるからね」
個人経営の苦労はある。しかし個人経営だからこそできるサービスが、次の商売にもつながる。大手の論理に縛られることを拒否し、自分の頭で考えて判断する経営者の生き方を井口さんは貫いている。


