“お弁当のゴミ回収”まで引き受けている
小学校では完全給食になって弁当の注文はなくなったが、家庭科の調理授業で使う食材の注文があったりする。取材当時にも、翌日届ける食材が箱に収められて用意してあった。大手チェーンのコンビニなら、なかなか難しいサービスだ。
そういう細やかなサービスで、PALは幼稚園や学校ともつながっている。だから保護者や先生との関係も深まり、機会があれば仕出し弁当を注文してくれるし、店も利用してくれる。
そういう地域のつながりに甘えてばかりいるわけではない。PALは気遣いの商売でもある。プラスチック容器での弁当を届けると、食事後の空容器の回収までやる。そこまでやっているところは、めったにないはずだ。
「自分が利用したときのこと考えるとね、弁当は届けてもらって楽だけど、ゴミになった空の容器を持って帰るのは嫌じゃない。会合のあとに飲みにいくとなったら、ゴミなんか持っていきたくないからね」
便利に思ってくれるサービスは、顧客の心にも残る。容器回収の手間は損にも思えるが、それが大きなつながりにもなって、次の取引にもつながる。「損して得とれ」は、井口さんの座右の銘でもあるのだ。
“令和の米騒動”でもおにぎりは110円
なにより、PALの弁当の強みは価格で、いまでも550円という安さである。配達してもらってゴミまで回収して、この価格は安いというしかない。コンビニの商売は価格競争でもあるのだが、大手コンビニに抗して、個人経営のPALは奮闘している。
「一昨年の9月かな、500円を550円に上げたの。そうしたら、売り上げが3割も減ったからね。だから、簡単には値上げしない」
価格に敏感な消費者の心理をよく理解し、それに応える努力をしているのだ。理由さえあれば値上げできる、横並びでやれば値上げできる、という発想ではない。
昨年の米騒動では、コメの値段が急騰した。競うようにコメ関連の商品を値上げするところが多かったなかで、PALは値上げしなかった。おにぎりも、いまでは大手コンビニでは200円前後もしているが、PALでは110円である。
「コメの仕入れ値は倍以上になっちゃったからね。それでもいろいろ工夫しながら、簡単に値上げはしない。弁当とかの原価率はかなり高くて、4割を超えているんじゃないかな。うちの場合、おにぎりや弁当が製造で、ジュースやお菓子は食品になっているけど、売り上げに占める割合は製造のほうが大きいのよ」
安いコメを仕入れるために、井口さんは走りまわった。ただ安ければいい、というものでもない。「古古古米だけはダメだね。ありゃ、おにぎりなんかにできない。試しに仕入れてみたけど使えなかった」と、笑う。


