「朝4時起き」で弁当作りを始める

朝4時過ぎには起きて、下準備したものを5時くらいから本格的に調理して、パートの手も借りながら弁当に詰めていく。もちろん店頭に置くおにぎりやサンドイッチの調理も並行して行う。そんなに忙しくて、奧さんは嫌にならないのだろうか。奧さんの井口幸子さんに訊いた。

「普通の会社に勤めていたので、調理の仕事に慣れていたわけではありません。それでも、若いときって何でもできてしまうんですよ。最近は歳のせいで、ちょっとキツくなってきたけど、辞めたいとはおもいませんね」

弁当作りの苦労を語るPALのオーナー・店主の井口和彦さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
弁当作りの苦労を語るPALのオーナー・店主の井口和彦さん。現在69歳だが、いまでも4時起きで弁当やおにぎりの調理を行っている

奧さんに任せきり、というわけにはいかない。弁当を詰めたり、おにぎりをつくったりして井口さんも手伝う。

PALのお弁当コーナー
撮影=プレジデントオンライン編集部
PALのお弁当コーナー。おかずがぎゅうぎゅうに詰め込まれているのに、全品550円

「おにぎりづくりなんて、うまいもんよ。といって型にご飯をいれて抜くだけなんだけどね。かなり早くできるよ」

できあがった弁当を届けるのは井口さんの役割だ。配達だけでなく、食材やジュース、お菓子といった商品の仕入れも井口さんの役目だ。

以前はPALのような小さな店のためにまとめて仕入れて配達してくれる会社があって、PALも利用していたのだが、利用する店が少なくなったことで廃業してしまったので、井口さん自らが仕入れに走りまわるようになった。そうやって昼間は走りまわっているから、井口さんが昼間に店にいることも少なかったりする。

「うちはね、子どもを大事にしてるの」

仕出し弁当の注文も、多いときには300個くらいあったという。その配達も井口さんが自分でやるので、てんてこ舞いにもなる。

「少年野球の大会があって、いっぺんに9チームくらいから注文があったのよ。子どもの分だけでなく親の分もあったりするから、そりゃ、300個は超えるよね。いっぺんに運べないから分けて持っていくんだけど、持ってくと『それ、うちの?』と言われると『これは違うチームのやつ、すぐ戻って持ってくるから待ってて』と言ったりして、たいへんだったよ」

PALの店舗看板
撮影=プレジデントオンライン編集部
PALの店舗看板。主力商品である「おにぎり・お弁当・サンドイッチ」が並んでいる

そうやって注文が殺到するのは、なにより馴染みがあるからだ。いまでは中学校も給食になっているが、昔は自宅からの弁当だった。

PALの店内に入って右手側すぐにある弁当箱置き場
撮影=プレジデントオンライン編集部
PALの店内に入って右手側すぐにある弁当箱置き場

「それでも、母親が忙しかったりして弁当を持ってこられない子がいるわけ。そういう子のために職員室でまとめて、うちに注文してくれるわけ。そんなん多い数じゃないけど、うちはちゃんと引き受ける。そうやっていると子どももそうだけど、先生ともつながりができるよね。だから野球大会だったり、先生たちの会議があったりすると、うちの弁当を注文してくれるの。そういうつながりがあるから、仕出し弁当も忙しいのよ」

いまでも、幼稚園に届けることもある。給食がなくて弁当の幼稚園では、やはり母親が忙しくて弁当も持たせられない日があったりする。そうすると朝に幼稚園から連絡があり、昼食時間に間に合うように届ける。それも通常の、大人用の弁当を届けるわけではない。

「子ども用の弁当をつくって持っていく。サンドイッチひとつでいいという子がいれば、それにも合わせて持っていく。うちはね、子どもを大事にしてるの」