時代に逆行する予算の大幅減
食料を自給しなければ、社会の安定と国家の自立は困難になります。
そこで、農漁業生産とその加工を含めた食料サプライチェーンの過半を、グローバリゼーションとは切り離して自国内に確保することが大切です。世界全体で進みつつある食料不足は、今後確実に深刻化します。
今や食料問題は重大な安全保障問題です。今の日本を攻撃するのにミサイルや戦車は必要ありません。
軍事攻撃や領土の侵害といった、仕掛ける側が国際的に孤立しかねない行動を取らずとも、日本に肥料や種子や飼料を売らなければいいのです。これなら軍事同盟である日米安全保障条約も発動しません。
肥料や種子の輸入が止められれば日本の農業は1年と持たずに崩壊し、国民は飢え、日本の社会は内部崩壊するでしょう。
軍事的侵略行動より食料貿易における禁輸措置のほうがはるかに実行へのハードルが低いと思われます。
こうした食料危機という「有事」に備えて国内の農林水産業をしっかり維持することは、軍事的リスクに備えた防衛力増強と同様に、費用対効果と関係なく実現しなければならない最重要政策だと思います。
国民の生命と健康にかかわる食料安全保障は市場経済に委ねてはならないものです。防衛費並みの予算を農林水産業保護に投下してもいいぐらいですが、現実にはそうした予算配分にはなっていません。
日本だけが農林水産予算を大きく減少
1980年に約2.2兆円だった防衛予算は2024年には約7.9兆円と、3.5倍に増大しました。
他方、1980年に約3.6兆円だった農林水産予算は2024年には約2.3兆円となり、4割も減ってしまいました。これでは日本の食料供給は守れません。
他国はどうかと言うと、農水省が1980年から2021年までの世界の農林水産予算の推移を公表しています。
それによればアメリカでは約7.5倍の28.6兆円に、EUでは約4.7倍の6.9兆円にそれぞれ大幅に増額しています。
先進諸国の多くが食料産業を保護するために、積極的に予算を増加させてきたのに、日本だけが農林水産予算を大きく減少させています。為替の変動を考慮に入れてもその差は広がる一方です。

