長野県の佐久長聖高校などと並び、箱根駅伝で活躍する選手をたくさん育てている福島県の学法石川高校。スポーツライターの酒井政人さんは「スカウト活動を積極的にしているわけでないが、選手がぐんぐん伸びる背景には、松田和宏監督のマネジメントや練習法がある」という――。

「学法石川」の選手がぐんぐん伸びるワケ

福島県の学法石川高は陸上の強豪校だ。昨年12月の全国高校駅伝は悲願の初優勝を成し遂げた。

全国高校駅伝男子で力走する学法石川1区の増子陽太(手前)=2025年12月21日、京都市(代表撮影)
写真提供=共同通信社
全国高校駅伝男子で力走する学法石川1区の増子陽太(手前)=2025年12月21日、京都市(代表撮影)

松田和宏監督は2009年に同校に就任。相澤晃(東洋大→旭化成)、遠藤日向(住友電工)ら、のちに日本選手権を制したスピードランナーを育成して実績を積むと、16年目にして全国高校駅伝の舞台である京都・都大路で“日本一”に上りつめたことになる。

だが、これまでの過程には紆余曲折があったという。そのなかで部員80人を、たったひとりで指導している。これだけの大所帯をひとりで切り盛りするのは珍しい。松田監督は各選手にどんな“魔法”をかけているのか。

現在51歳の松田監督は、東海大山形高時代から全国トップクラスの選手で、中央大では箱根駅伝で花の2区を4年連続で務めた。3年時にチームは32年ぶり14回目の総合優勝を飾っている。

箱根駅伝に大量の選手を送っている

実業団時代はマラソンで活躍。滋賀大院で学んだ後、2009年に学法石川高の教諭となり、陸上部の顧問に就任した。そして大学や実業団のチームに次々と有力選手を送り出した。

箱根駅伝登録選手の出身校別では、学法石川高が2021年と2022年に最多11人。今年も9人がエントリーされた。この10年ほどは、佐久長聖高などと箱根駅伝選手を輩出する高校のトップ争いを繰り広げている。

その一方で全国高校駅伝の結果は“期待外れ”に終わることが少なくなかった。特に印象に残っているのが、2015年大会だ。相澤晃、阿部弘輝、田母神一喜、遠藤日向ら前年7位のメンバーが5人残り、トラックシーズンを席巻。初優勝を狙ったが、まさかの7位に終わっている。

翌年はエース遠藤が欠場した影響もあり42位に沈んだ。その後、5回の入賞を重ねるも、最高順位は3位(18年)。2024年に過去2番目タイの5位に入ると、2025年についに頂点に立った。

「(監督就任6年目の)2015年は、『優勝しようよ』と意気込んでいったんですけど、ダメでした。そのため今回はあまりプレッシャーをかけないようにした部分もありました。そもそも私は優勝できると思っていなかったんです。選手たちには最終ミーティングでも『3番くらいかな』と言っていたくらいですから。選手をリラックスさせる意味合いもありましたが、あそこまで走ってくれるとは思っていませんでした」