女子と一緒に練習で成長できたワケ
大学で主将を務めた吉田はこう振り返る。
「僕は中学時代の3000mベストが9分57秒で(男子の中では遅い部類だったので)最初は女子と一緒に練習していました。そこからチームメイトと一緒に高い目標を持って取り組んできて、5000mは14分15秒84までタイムを短縮して、都大路という目標を達成できたのは良かったなと思います」
学法石川の女子も全国高校駅伝に13年連続出場中で決してレベルが低いわけではない。部員数が多いだけに、松田監督が一人ひとりにきめ細かい指導をするのは難しかったが、ポイント練習のグループを多くすることで、自分のレベルに合った練習が可能になったのだ。吉田のような下位スタートの選手にとっては、グループが上がるたびに自信を深めていくことができるのだ。だからこそ、高卒後も大学や実業団であと伸びしたのだ。
今年の箱根駅伝で2区を日本人歴代3位の1時間5分47秒で快走した早大・山口智規(現・SGホールディングス)も松田監督の教え子だ。山口は学校のある福島県ではなく、千葉県銚子市出身。中学時代はクラブチームでの野球をメインにしており、本格的に陸上を始めたのは高校からだった。そこから5000mで高校歴代3位(当時)の13分35秒16をマークしている。
中学時代に活躍できなかった選手が急成長しているだけでなく、中学時代に速かった選手も伸びている。その代表格が3000mで8分11秒12の中学記録を保持する増子陽太だ。
学法石川高に進学後は5000mで高1歴代2位の13分54秒16、高2歴代最高の13分34秒60をマーク。3年時は5000mで高校歴代3位の13分27秒26を叩き出して、都大路1区を爆走した。
目的意識を持った練習をさせる
なぜこのような選手育成が可能なのか。
「型にはめるのではなく、選手自身のやりたい練習や考え方を尊重した結果、うまく伸びていったと思います。練習にプラスアルファする選手が多いですし、本校はフリーの練習も多いんです」
強豪校の場合、ハードな練習を全員でやるイメージが強いが、学法石川の場合は真逆だ。
「全員が同じようにやる練習は全体の50%くらいです。実業団に近い練習スタイルだと思いますね。増子のように実力のある選手は、チーム練習だけでは追い込めないので、自分で練習メニューを変えていました。またウチの練習コースは砂のサーフェスが多いんです。トラックやロードと異なり、砂は足をうまく地面に捉えないと反発を得られません。その結果、正しいフォームになったと思います」
フリーの練習が多いため、「目的意識を高く持っていないとやっていけません」と松田監督。この目的意識を持って取り組む習慣が身に付いた選手は、その後、大学や実業団でも伸びる好循環を生み出していることになる。シューズ選びもそうだが、指導者が細かく言わないところが選手たちの“自主性”を生んでいるのかもしれない。完全放任ではないものの、監督やコーチが徹底管理して「走らせる」方式を選択しない指導方法が今の選手にもフィットしていたのだろう。
また学法石川高は、「スピード系のトレーニングが多く、長い距離をそこまで走らない」のが特徴だ。スピードを生かすための土台作りを重要視している佐久長聖高とアプローチが少し異なるのも面白いところだろう。
全国高校駅伝で初優勝して、「地元の反響がすごかった」という松田監督。人口1万5000人ほどの小さな町は優勝パレードで大きく盛り上がった。
「地元の皆さんの期待に応えられるよう連覇を目標にしています。チャンスは十分にあると思うので、さらに強化していきたいですね。私は他のチームと違う練習で強くなっていきたいと思っていました。選手たちには、『昨年の優勝は忘れて、別のやり方で連覇しよう』と言っています。選手たちと相談しながら、新たなことに挑戦して、再び、日本一になりたいです」
学法石川高のトレーニング、育成法はまだまだ進化していきそうだ。


