エースが選んだ勝負靴は非厚底

学法石川高はナイキがサポートをしている数少ない高校駅伝チームのひとつ。ただし、シューズ選びについては選手に任せている。

「私が現役の頃は今ほどシューズの選択肢がありませんでしたから、シューズに関しては今の選手の方が詳しいですし、よく考えています。ジョグ用モデルだけでも多くの選択肢があり、細かい感覚で選べるので恵まれていると思いますね。全国高校駅伝では大半の選手が『ヴェイパーフライ』という厚底シューズを履きました」

そのなかで全国高校駅伝1区を日本人最高記録の28分20秒で突っ走った増子陽太だけは非厚底シューズだった。『ストリークフライ 2』というモデルだ。フルレングスのカーボンファイバー製プレートが搭載されているが、ソールが薄いため、重量はヴェイパーフライ 4より約44g軽い約127g(27cm)しかない。ストリークフライ 2に関して、増子はこんな感触を持っている。

「スパイクから厚底への移行期間がなかったこともあり、できるだけスパイクに近いシューズを履きたいと思っていたんです。ストリークフライ 2は軽くて、スパイクでロードを走っている感覚があり、自分にハマったシューズだったと思います」

全国高校駅伝1区を日本人最高記録で走った増子陽太選手
写真提供=ナイキ
全国高校駅伝1区を日本人最高記録で走った増子陽太選手

そして増子だけでなく、3区の栗村凌も区間賞を獲得。ダブルエースが快走したことで、チームは一気に加速した。松田監督はレース展開をどう読み、選手にどんな声をかけたのか。

「他校は後半区間が強かったので、前半区間でリードを取る戦略でした。1区の増子と3区の栗村で飛び出して、折り返し地点で30秒のリードがあれば勝負できると思っていました。実際は折り返しで1分ほどのリードを作れました。それでも選手たちには、『守らずに積極的に走ろう』という指示を出したんです。それが良かったのかなと思いますね。みんな想像以上の走りをしてくれましたから」

その結果、学法石川高は後続に大差をつけて、2時間0分36秒で初優勝。佐久長聖高が保持していた高校最高記録(2時間1分00秒)を大きく塗り替えた。

多くの箱根駅伝選手を育てている学法石川・松田和宏監督
写真提供=ナイキ
多くの箱根駅伝選手を育てている学法石川・松田和宏監督

80人の選手をひとりで指導する

学法石川高は次々と魅力的な選手が育っている。スカウティングに関しては、「積極的に勧誘することはない」という一方で、入りたい選手を断ることもないようだ。

「基本的には、学法石川で陸上をやりたいという強い気持ちのある生徒を受け入れるようにしています。その気持ちがないとやはり3年間は続きませんから」

箱根駅伝で大活躍する選手が育ったこともあり、入部希望者が殺到。2025年度の部員は男女合わせて80人もいた。その選手たちを松田監督はひとりで指導している。

「長距離だけの部員(男女で65人)でいうと、おそらく日本一多いと思いますね。さまざまなレベルの選手がいるので、ポイント練習(インターバル、ペース走など、心肺機能や脚力を鍛えるための高強度トレーニング)はレベルごとに細かく分けています」

男子はA~Eくらいまで能力別にチーム分けをして、ポイント練習を行っているという。面白いのがどこのグループに属するかを選手自身に選ばせていることだ。

驚くことに入学時に女子のBチームで練習をしながら、3年時には全国高校駅伝4区(10位)を走り、その後、箱根駅伝(創価大)に3年連続で出場した吉田凌(現・JR東日本)のような選手もいる。