「仕事は先輩から盗むものだ」というスタンス
以前勤めていた会計事務所での話です。
通信販売会社である顧問先は、春の新商品のカタログを顧客に送らなければなりませんでした。しかし、完成したカタログに不備があり、変更を余儀なくされます。
例年4月の上旬は、エース級商品の販売が大きく見込めます。しかし、一昨年あたりから、ライバル会社が類似商品を提供しはじめました。
宣伝広告費を使い、徐々に売上も追いつかれてきています。そのような状況の中、遅れてカタログを発送するわけにはいきません。手直しの期限は3日間。
今回の不備の発生は、仕事が遅いリーダーのBさんが、部下と意思疎通ができていなかったことが原因でした。
Bさんは、「俺についてこい」と背中を見せるのがリーダーシップだと思っているタイプ。Bさん自身が若手社員の頃、上司の背中を見て育ったこともあり、「仕事は聞くものではなく先輩から盗むものだ」というスタンスだったのです。
だから、Bさんのところへ部下が質問に来ても、「そんなことも分からないのか」と厳しい表情で接していました。こういう態度をとられると、部下はBさんに相談しづらくなり、コミュニケーションが図れなくなってしまいます。
結局、カタログの修正は、金曜の夜から土日も含めた3日間で、なんとか終わらせることができました。しかし、休日出勤により余計な人件費が発生しました。
さらには、急な出勤で休みの予定を変更させられた部下たちのモチベーションは低下し、翌週のパフォーマンスも下がってしまいました。
腹を見せて助けを求めたら全員が動いた
一方、仕事が速いリーダーのAさんも、似たような経験をしたことがありました。
そのときAさんは、「カタログに不備があったのは俺の責任だ。なんとか期日に間に合わせたいから助けてほしい」と頭を下げたのです。
つまりAさんは、自分の責任であると認め、背中ではなく腹を見せて「助けてほしい」と最初に語ったわけです。
さらにAさんは、「自分もこのページでミスしたから、注意してほしい。二重チェック体制をとりたい」と、自己開示してから不備を直しました。加えて、「何かいいアイデアがあったら教えてくれ」と部下に相談します。
すると、ある部下がこのように言いました。
「それぞれが仕入を担当している商品カテゴリーがあります。まずはそこを担当者がチェックしますので、そのうえでAさんがチェックしてください」
このような対策は当たり前ですが、緊急事態の場合には思い浮かばないことも多いでしょう。
何よりAさんの部下は、リーダーから相談されたことに対して助けることができたので、この仕事を「自分事」として捉えられたのです。
Bさんの部下が「やらされ仕事」と感じたのとは対照的です。

