お酒は天からのありがたい贈り物

私なら仕事を終えての晩酌がまさに養生で、養生は一日たりとも欠かせてはいけないものです。

江戸時代の大養生家である貝原益軒かいばらえきけんの名著『養生訓』にも「酒は天の美禄びろくなり」、つまり、お酒は天からのありがたい贈り物だと書かれています。

「酒は天の美禄なり。すこしのめば陽気を助け、血気をやはらげ、食気をめぐらし、うれいを去り、きょうを発して、はなはだ人に益あり。

多くのめば又よく人を害する事、酒に過ぎたる物なし。水火の人をたすけて、又よく人に災あるが如し」

適度なお酒がどれだけの効果があるか、このような名文を残しているのです。

そんな話をしたあと、

「お酒があなたにとって養生であるなら、毎日飲んだ方がいい」

そう伝えると、患者さんは立ち上がって、深々と頭を下げ、

「わかりました」

と満面の笑顔で答えます。奥さんは「あきれた」とでも言いたげに、私とご主人の顔を交互にながめます。

だいたい、がんのような大病をした人は、大酒を飲むようなことはしません。ほろ酔い気分で床につき、いい夢を見るはずです。

たばこでこころが和むことも養生

たばこもそう。私は吸わないのでわかりませんが、緊張が続いたあと一服のたばこでこころが和むこともあるのでしょう。これも養生だと私は思っています。

杓子定規に、お酒が悪い、たばこをやめろと決めつけるのではなく、今日一日がんばったご褒美として少し気分がよくなる程度にお酒を飲んだり、リラックスのためにたばこを吸ったりするのは立派な養生です。

帯津良一『やり残したことは、死んでからやればいい』(廣済堂出版)
帯津良一『やり残したことは、死んでからやればいい』(廣済堂出版)

少なくともお酒は私には欠かせないものです。晩酌の時間があるからこそ、私はこうやって元気に現役で働き続けていられると言っても過言ではありません。

ここまでお話しすると、

「そうだよね。がんばっているもんね」

奥さんも納得した表情になります。

退院していった患者さん、何カ月に一度か診察にみえますが、いつも「お酒、飲んでいますから」とうれしそうに報告してくれます。

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