30代に築かれた人生の土台

それから10年、40代にはいるときはどうだったか。

30代になるときと比べて40代はなんだかサラッと突入した印象がある。たぶんそれは30代のときほどの大きな人生の煩悶がなかったからだろう。

角幡唯介『43歳頂点論』(新潮新書)
角幡唯介『43歳頂点論』(新潮新書)

ホームレスになることも視野に一か八かで選択したフリー探検家の道であったが、幸運なことに執筆した書籍がノンフィクション作品として評価され、物書きとして自活できるようになった。

自分で書いたものが賞と名のつくものをいただくなど退職前は想像したこともなかったが、それをきっかけに探検家兼文筆家という特異なポジションを業界内に獲得し、好きなことを書かせてもらえる立場となった。

探検してそれを書くことを生業にできたのは文才ではなく、次から次へとテーマが湧いて止まらない性格ゆえだろう。プロの書き手に一番必要なのはテクニックではなく、書きたくて書きたくてたまらない何かが内側から込みあげてくるかどうかだ。

さらに家族もできて、30代に人生の土台が着々と築かれていった。

この土台はかなり堅牢で、そんなに簡単には崩れそうにないし、自分で崩すのも大変な労力が必要そうだ。この土台のおかげで、当時は人生最高の探検作品を制作したいという思いを具現化することに専念できた。

楽しいというより、とり憑かれていた

それは脱システムという思想を行動に移すこと、すなわち極夜の北極を旅することである。楽しいというより、とり憑かれていた時期だったといえる。

30代、40代への突入時は楽しさというより走り抜けた感覚がつよい。しかし50代を前にしたいまは、どっしり腰を落ちつけてそれを待ち構えている感じだ。もうここまできたらどうなってもいいや、という変な開き直り感もある。

【関連記事】
パカッと開けて週に1、2個食べるだけ…がん専門医が勧める「大腸がんを予防するオメガ脂肪酸たっぷり食品」
94歳、今も踊り続ける…「日本フラメンコ界の母」が20代の時にナイトクラブで見た忘れられない光景
ギャンブルでも、旅行でも、美術品収集でもない…和田秀樹が手を出すなという「世の中で一番金のかかる趣味」
なぜ伝説の動物写真家はヒグマに命を奪われたのか…星野道夫さんの悲劇を呼んだ「餌付けされたクマ」の怖ろしさ
「牛乳だけ」よりずっと効果的…医師「必ず一緒に摂って」と断言、骨を強くする"スーパーで買える食材"