心が辛いときには、どうすればいいか。がん研究会有明病院腫瘍精神科部長の清水研さんは「自己否定が強くて苦しい状態でも、その考えをいきなり変えようとしてはいけない。今までとは異なる行動パターンを試してみることから始めるといい」という――。

※本稿は、清水研『こころの傷つきをなかったことにしないでください』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

女性は2人の男性の間の意見の相違を仲介
写真=iStock.com/FatCamera
※写真はイメージです

これまでの「厳しい脚本」を否定しない

私がカウンセラーの側に立つ場合、まず行うべきことは、患者さんの話をよく聴いて、その人が歩んできた道のりをしっかり理解することだと思っている。

そして、その人の自己否定が強くて苦しそうだとしても、その考えをいきなり変えようとしたり、否定したりすることはしない。なぜならその働きかけは、さらなる自己否定や傷つきにつながってしまうからだ。

患者さんの話を聴いたのち、私がいちばん最初にかける言葉は、「与えられた環境の中で、そうやって生きてくる必要があったのですね」というような内容であることが多い。

つらい価値観や行動を変える前に、することがあるのだ。それは、「なんでいつもこうなんだろう!」という否定的な見方を、「そうか、同じことを繰り返してしまうけど、自分はこのように生きてこざるをえなかったのか!」という認識に変え、今まで苦労して歩んできた道のりを愛することである。

実際、その苦しい生き方をその人が選択してきたのは、その人に落ち度があったのではなくて、厳しい脚本を渡され、その脚本に沿って生きていかざるをえなかったからなのだから。