怒りには、自分の価値観が隠れている

wantに沿った行動をとるために、実はカギとなる感情があり、それは「怒り」である。自分の場合は、mustとの闘いを地道に続けていったが、「怒り」を表現することで、その闘いの日々に終止符を打つことができた。

清水研『こころの傷つきをなかったことにしないでください』(KADOKAWA)
清水研『こころの傷つきをなかったことにしないでください』(KADOKAWA)

怒りの感情が湧くのは「こうあってほしい」という期待が裏切られたときだ。なので怒りは、願望を実現するための武器である。

そして、我慢して生きている人に湧く怒りは、自分の根っこにある本質の「こうしたい(want)」から出てきていることが多く、怒りを感じているということは、自分が傷ついているサインなのだ。

一方で、怒りが湧いてきたときは、自分が縛られている「こうあるべき(must)」から自由になるチャンスでもある。

怒りをおぼえたときにどうすればいいのか。短絡的に暴言を吐くなどすれば、自分も損をする。最良の戦術を吟味するため、いったん態度を保留にして、持ち帰るとよいだろう。

怒りを感じたとき、丁寧に心の内を見て解像度を上げていくとよいだろう。怒りを深く掘り下げていくと、自分の価値観の本質に行き着くからだ。

たとえば、部下に「なぜもっときちんと仕事をしないんだ」と腹が立つとき。部下にも非があるかもしれないが、部下に怒っているようで、実はそれは「きちんとしなければならない」という「must」への怒りなのかもしれない。

「must」に縛られ我慢している苦しさが、のびのびしている部下への嫉妬になって怒っているのだ。「いい人」や「頑張りやさん」ほど、理不尽なことを我慢して、多くの怒りを抱えている。

私も、相手の都合のよいように扱われても文句を言えず、怒りが積み重なっていった。

怒りを上手に解放することが豊かな人生に

40代のあるとき。私は我慢の限界を迎えたのか、当時の上司の言動を看過できず、初めて怒りを爆発させた。それはまさに爆発だったので、どう転ぶかわからない、おすすめできない怒り方だった。

しかし、私の場合は結果的にその怒りが自分を解放するきっかけとなった。それからは、「都合のよいように扱われる」ことには、適切に怒りの感情を働かせて、「NO」と言えるようになったのだ。

もちろん、納得がいかなくても周囲に従うことが今でもある。そういうときも、ただ我慢するのではなく、「これぐらいは譲ったほうが楽だな」とか、「この組織にいたいので今回は人間関係を円滑にするほうを選んでおこう」と、自分のための戦略に基づいた選択であることを、決断前に確認する。

必要なときには怒りの感情を働かせて、人と対等な関係を築く。その結果、自分の「want」の声を大切にできるようになり、最近はそこまで腹が立たなくなった。怒りを上手に解放することは、豊かな人生につながるのだ。

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