体力が基盤となる活動はいつまで続けられるか。探検家の角幡雄介さんは「40を過ぎて体力が落ちたら探検、登山、冒険は趣味的レベルにとどめ、仕事としては取材作家に専念するのだろうと漠然と想像していた。しかし、これは加齢の妙味を読み誤っていた。執筆スタイルの変化を見ても30代後半から40歳ごろにかけて、私は経験がもつ力に覚醒していった」という――。
※本稿は、角幡唯介『43歳頂点論』(新潮新書)の一部を再編集したものです。
以前の40代のイメージ
30代前半ぐらいまで、40以降の人生について次のようなイメージをいだいていた。
40をすぎると加齢で身体が動かなくなり、現役の探検家としての活動はむずかしくなるだろう。
身体能力が落ちていくのに、それまでの生き方にしがみつき、若い頃とおなじ活動に執着するのはどこかみじめだ。長い人生、年齢相応の生き方があるわけだから、加齢に抗わず活動をシフトチェンジしてゆくのがカッコいい大人というものではないか――。
では具体的にどのような生き方を想定していたかというと、それは取材作家として仕事をつづけることである。
27歳から32歳まで新聞記者として勤務していた経験があり、それがきっかけで私は物書きに転じた、ということはすでに書いた。
学生時代からつづける登山・探検活動は、私にとっては生きることそのものなのでやめられない。しかし文章を書くのも面白く、これまたやめられない。
ならば探検してそれを自分の言葉で物語にしあげるのが生き方としてベスト、ということになり新聞社を退職してフリーの身となった。こうして行為と表現を自分なりに融合させることを渡世としてきたわけだが、なまじ記者をやっていた経験があっただけに退職後もしばらく取材のほうもつづけた。

