経験をもとに思考し生まれる言葉の説得力

経験をもとに思考すると、不意におそろしく説得力のある言葉が生まれる瞬間がある。

角幡唯介『43歳頂点論』(新潮新書)
角幡唯介『43歳頂点論』(新潮新書)

読書をつうじて獲得した知も、ただそれだけでは通り一遍の情報にすぎないのだが、そこに経験の作用がくわわると、表面的なものにすぎなかった知が骨の髄までしみこみ、ああそういうことだったのかと腑に落ちて、言葉そのものが私という存在を、私をとりまく世界をつくりあげる重要な成分となり、生きることの豊かさを増すのである。

言葉は私と外の世界とをつなぎとめる結節点だ。真に説得力のある言葉を数多く見つけ、それで外界を理解することにより、無味乾燥だった外界は私とのあいだに有機的連動をおこし、豊かで深みのある世界にかわる。他人に話を聞いたり、本で仕入れた知識で内容をごまかしたりしても世界を深める本質的な言葉は見つからない。

執筆スタイルの変化を見ても30代後半から40歳ごろにかけて、私は経験がもつ力に覚醒していったのだと思う。

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