現実の20歳は経験が浅すぎる

きわめて漠然とではあるが、私には40にさしかかる前ぐらいから、人は30代にもっとも価値ある作品をのこすことができる、という奇妙な確信があった。

20歳、30歳、40歳というのは人生の区切りになる年齢である。

20歳は成人式という公的行事があることからもわかるとおり(最近は18歳に引き下げられたが)、子供から大人になる年齢として社会的に長らくみとめられてきた年齢である。同様に30歳、40歳もまた、20歳に負けず劣らず、というかそれ以上の区切りになると私個人は思っている。

ではそれぞれどういう区切りかというと、30歳はいよいよこれから人生を発展、爆発させてゆくまさにそのスタート地点としての区切りだ。

右肩上がりのグラフの前に立つ男性
写真=iStock.com/takasuu
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なるほど20歳は子供から大人になる区切りかもしれないが、それはあくまで社会制度がもとめた区切りであり、現実の20歳は、肉体や知能は成長してもまだ経験が浅すぎて中身は子供とさほどかわらない。

それが社会に出て何らかの職や仕事に従事して成功や失敗を経験し、あるいは職種があわずに転職したり、逆に本当にやりたいことが見つかったりなどしてゆくうちに、自分に固有の道というものが見えてくる。

勝負は30代

要するに20代というのはまだまだ模索の時期、自分探しの時期である。日本の学校教育システムでは多くの人が高校や大学卒業時に就職時期をむかえるので、このときに人生の決定的選択を迫られるという感覚になりがちだが、実際にはそうではない。

20代のあいだはいくらでもやり直しがきく。本当に自分が求めている生き方がそこになければ会社や職種を変えればいいわけだし、それこそいきなり退職して一年間の世界放浪に出たところで全然まにあうのだ。

まにあうというのは、放浪したことで日本の会社社会に居場所がなくなっても、その経験をいかしてライターをめざしたり、インド料理人になったり、バーを開いたりと、別の道を模索する余裕が時間的にあるということである。

と考えると、20代というのは色々な経験をして選択肢を増やすことで、長い人生を面白おかしく、より有意義に生きるための土台を築く時期である。

そして20代のときに築いた土台を踏み台にして、よし、オレの人生はこれで行くぞ、と腹を決めてその道に専念し、具体的に人生を作り上げてゆくのが30代である。

だから勝負は30代だ。20代に築いた土台をもとに若さというつぎつぎになりゆく勢いの力で人生を切り開き、頂点にむけて駆けあがってゆく黄金期、それが30代である。