退職ドミノを止めるたった一つの視点

だからこそ、最後に残る問いは一つです。あなたは、誠実な人が辞めない構造を、意図して設計しているか、ということです。

制度を入れれば解決する、という話ではありません。評価制度を変えれば、1on1を増やせば、面談を丁寧にすれば。それだけでは足りない。

本質は、「社員の献身(負担)に甘えるのではなく、是正したり、アラートを鳴らしたりする構造」を意識的に設計しているかどうかです。属人化が進み、「あの人がいるから回っている」という状態を放置していないか。責任と権限が一致しているか。“できる人”に仕事が集まることを、称賛で終わらせていないか。

本当に強い組織は、誰かの善意に依存しません。負担が増えたら、仕組みで分散される。限界が近づけば、役割が再定義される。成果が出れば、再現可能な形に標準化される。「守る」とは、感情ではなく設計なのです。

ドミノ倒しのドミノがすべて倒れるのを途中で止めた男性の手元
写真=iStock.com/ilkercelik
※写真はイメージです

誠実な人が辞める会社の共通点

誠実な人が辞める会社には、共通点があります。それは、問題が起きたときに“個人の努力”で解決しようとすること。一方、誠実な人が残る会社の共通点は、“構造を変える”ことを選ぶ点にあります。

あなたの会社で、限界を訴えた人に対して、「ありがとう。では構造を見直そう」と言えていますか。それとも、「もう少しだけ頑張ろう」と言っていませんか。

退職ドミノを止める方法は、難しくありません。ただし、簡単でもありません。一人の退職を「個人の事情」で終わらせず、その背後にある依存構造を特定し、再発しない仕組みに置き換えること。それを、徹底的にやり切ることです。

誠実な人が安心して働ける会社とは、強い人を守る会社ではありません。弱さを出せる構造を持つ会社です。次に辞める人を止めるのではなく、次に辞めなくていい構造をつくる。

その設計を引き受けるのは、経営の責任です。退職ドミノが起きるかどうかは、偶然ではありません。組織が善意で回っているのか。それとも構造で回っているのか。その違いが、未来を分けます。あなたの会社は、どちらでしょう。改めて点検してみてください。

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