「成功するほど楽しめなくなる」という真理

「スポーツが好きなのは、得意だから? それとも好きだから得意なのか?」

こうした問いは、自分が選んだ分野で進歩していく中で誰にでも起こり得ます。私たちの努力は、仕事を楽しむことよりも、勝つことへと傾きがちです。喜びよりも、ネガティブな影響を避けることのほうが重要になり、楽しみよりも、失望を避けることのほうが重要になります。私たちはトップを目指して努力を続けます。

でも、頂点に到達したとしても、その時にすべてが崩れ去ってしまうかもしれません。つまり、成功すればするほど、それを楽しむことが難しくなるということです。大坂選手を見て、問題だけでなく解決策も見出しました。それは「ビジョン(Vision)」です。かくれうつを根絶したいなら、この最後の「V」をマスターしなければなりません。では、ビジョンとは一体何を意味するのでしょう?

ビジョンとは、成功を認識し、それを祝う方法を計画し、実際に時間をかけてその計画を実行する能力です。

今の文章を2回読んでください。かくれうつの人は、おそらくこの3つのうちの1つさえできていないでしょうから。職場で素晴らしいプレゼンをして上司から賞賛された時、かくれうつの人は自分を褒めません。それどころか、うまくいったことを認めようともしません。すでに次のタスクに取り組んでいます。

上昇と下降の道を歩く男
写真=iStock.com/bpawesome
※写真はイメージです

自分で、自分をほめられない

でも、ビジョンを持つと実際に立ち止まって「やった、うまくいった!」と思えるようになります。そして、週末に30分のマッサージを予約して自分にご褒美をあげます。前日に「用事ができた」という理由で予約をキャンセルしたりしません。

ビジョンが曇っていると、何か素晴らしいことを成し遂げたことにさえ気づきません。あの大口顧客を獲得できたのは運が良かったから、と自分に言い聞かせます。あの賞を獲得できたのは審査員が自分の仕事をよく見ていなかったから、と考えます。

ビジョンが欠けていると、成果を祝う計画など立てません。目立ちたくないインポスター症候群なのですから、わざわざ注目を集めたりしないのです。自分にご褒美をあげたくても、おそらく恥ずかしくて実行できない。結局のところ、自分は賞賛に値しない、ただの大きな間違いだ、と考えます。

でも、ビジョンが明確であれば、勝利の瞬間に浸ることができます。何かの間違いだとか、相手を騙してしまったとか思うのではなく、立ち止まって自分の成し遂げたことを祝うことができるのです。