すぐに「次の目標」に意識を向けてはいけない

ここまでかくれうつを克服するための「V」をいくつか紹介しましたが、無快感症を克服するにはビジョンが最も重要です。ビジョンは、人生の喜びを育むことに集中する後押しをしてくれるからです。

ジュディス・ジョセフ『かくれうつ』(訳:鹿田昌美、飛鳥新社)
ジュディス・ジョセフ『かくれうつ』(訳:鹿田昌美、飛鳥新社)

あなたは、友達に無理やりパーティーに連れて行かれて、結局楽しすぎて店が閉まるまで居続けてしまったことはありませんか? ここでは、いわば私があなたをパーティーに連れて行くのだと考えてください。きっとあなたは、パンプスを脱ぎ捨て、結んでいた髪をほどいて、閉店時間になってバーテンダーに「家に帰る必要はないけど、ここにいるのはダメよ」と声をかけられ、ダンスフロアから追い立てられることでしょう。

ビジョンは、あなたが最高に楽しい時間を過ごせるように、パーティーに行くよう促します。

自分の勝利は、認識して祝わなければ見過ごされてしまいます。見過ごされると、勝利に対する感覚がマヒします。勝利への感覚がマヒすると、立ち止まって勝利に意識を向けません。すると勝利から喜びが失われ、ほとんど気づかなくなります。すでに次の目標に意識が向いているからです。

ビジネスマンの足とスタートからゴールのルート
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

無快感症は、誰にでも起こり得る

なぜスーパーボウルのクォーターバックが、優勝後に何万ドルも支給されてディズニーワールドに行くのでしょう(※2)。あるいは、タイガー・ウッズがPGAトロフィーの置き場所を知らないのはなぜでしょう(※3)。または、大坂なおみがなぜテニス界から距離を置いたのかを考えてみてください。突き詰めると、答えは「無快感症」だからです。

※2 “Why Do Super Bowl Winners Go to Disney?,” ESPN, February 12, 2024,
※3 Adam Schupak, “Masters: Rory McIlroy Visits Tiger Woods, Who Admits He Doesn’t Know Where All His Trophies Are,” USA Today, April 6, 2021, https://golfweek.usatoday.com/2021/04/06/masters-rory-mcilroy-tiger-woods- trophies/.

無快感症は、誰にでも起こり得るものです。世界クラスのアスリートでなくても、勝利を祝福しない冷えきった気持ちになることはあります。卒業式や注目を浴びる授賞式、自分のために開かれるパーティーを欠席しようと思ったことがある人は、典型的なかくれうつです。

そんな瞬間、あなたの無意識は「自分は祝福されるに値しないのだから、参加する必要はないのでは?」と告げています。でも、その瞬間を逃してしまうと、インポスター症候群になったり、「無価値だ」という意識に屈したりするだけです。