「あのメンバーでよくやっているね」の声

――3年間で高揚感を味わえる瞬間はありましたか?

【吉井】やはり、藤岡(裕大)が2023年CSファーストステージの福岡ソフトバンクホークス戦で延長10回裏に放った、起死回生の3ランホームランですね。大逆転勝利につながる1発でした。

あのホームランをきっかけに藤岡自身の野球に向き合う姿勢も変わり、チームを引っ張ってくれるようになりました。

――あの時の盛り上がりはよく覚えています。結果的には、2023、2024年は、優勝にもう一歩、届きませんでした。その要因については、どう分析されていますか?

【吉井】2位、3位まで行けたとしても、もう頭ひとつ突き抜けるためには、何かが足りません。たしかに気持ちの部分もありますが、そこはもう単純に戦力だったと思います。言いづらいのですが「あのメンバーでよくやっているね」と言われていたことが現実です。

優勝するためには、侍ジャパンに入るような「Sクラス」の選手が1~2人必要です。そういう選手を育てなくてはならないと思いました。

――そうなってくると、やはり編成が重要な課題になってきますね。

【吉井】課題は多いですが、手ごたえも感じています。とくに侍ジャパンに選出された種市は、この3年間で目覚ましい成長を見せてくれました。種市には期待している分、これまで厳しいコメントを多く残してきましたが、本人も負けじと頑張ってくれて昨シーズン後半は無双の活躍でした。

ブルペンの種市 WBC日本代表キャンプ
写真=共同通信社
2026年2月15日、ブルペンで投球練習する種市(撮影=宮崎)

マリーンズにはほかにも若くて優秀な選手が多いので、種市に続くSクラス入りを目指してほしいですね。

――投手編成の重要性はWBCでも実感しましたね。

【吉井】2023年のWBCでは、投手メンバーを決めた時点で「これは優勝できる」と思いました。アメリカなどは錚々たる打線でしたが、投手陣を比べると断然日本の方が強いと思ったんです。接戦にはなりましたが、準決勝で対戦したメキシコが最後にリードを守り切れなかったのは、リリーフの差です。

野村監督「ちゃんと根拠を持て」

――野球において、投手陣の整備がいかに重要であるかを考えさせられますね。吉井さんは95年から97年にかけて、先発投手としてヤクルト黄金時代の一翼を担っていたことで知られています。当時の監督であった野村克也さんから受けた指導で、何か印象に残っていることはありますか?

【吉井】現役時代、野村監督の話をあまり聞いていませんでした。だからそこまで印象に残っている言葉はありません。ですが、「選手を信頼してるぞ!」という気持ちは感じ取っていました。

具体的に言えば、失敗した同じような場面でもう一回使ってくれるんです。それは選手にしてみたら、「頑張ろう!」という気持ちになります。それが一番印象に残っていますね。だから、自分が監督になって「選手がたとえ失敗しても早くチャンスをあげよう」と考えるようになりました。

――東京ヤクルトスワローズ前監督の髙津臣吾さんも「野村監督の言葉はあまり覚えていない」と言っていました。一方で、「野村ノート」は今でもよく読み返すそうです。

【吉井】私も「野村ノート」は読み返しますね。書かれているのは基本的なことばかりです。「野蛮な勇気で試合を進めるな!」とか、「ちゃんと根拠を持て。そうすればその作戦に対して勇気が持てる」とか……、そういう言葉は頭に残っています。

スコアラーの人が「それには理由があるのか! 根拠があるのか!」と怒られている姿をたびたび見掛けました。