盛り上がらない会話ほど“寒い”ものはない
もちろん、いきなりジョークを飛ばすべきだなどと言っているのではない。とりわけ初対面の人に会うや否や冗談を言えば、かえって心証が悪くなることも大いにある。
だが、前項でも見たように3分、5分といった雑談の時間は、相手のガードを下げさせるまたとない機会だ。質疑の場は、しょっちゅう会う知り合いとバカ話をするのとは、わけが違うのもまた事実である。
久しぶりに会う人も、こちらが何らかオフィシャルなビジネストークをする、あるいはインタビューをするとなれば、無意識のうちに身構えるだろう。まして初対面の人ならなおさらだ。
そうした構えを緩めるチャンスを自らの手でつぶすのは、あまりにもったいない。だいたい、一向にくだけた雰囲気にならない会話は、普通の感覚でいったら「盛り上がりに欠ける」ということになるだろう。
盛り上がらない会話ほど“寒い”ものはない。そう強く信じているのは、私だけではないはずだ。
相手が話しやすいであろう“タネ”をまく
そうならないためにも、この1週間でどんな人に出会ったかといった他愛もない話、家族のエピソード、あるいは昨今の社会情勢についての軽い意見交換など、相手が話しやすいであろう“タネ”をまくくらいのことはすべきだ。
なぜなら、人に話を聞く、知りたいことを尋ねるときの最終目標は、前述したようにこちらが欲しい答え、あるいはそれを超える発言を引き出すことだからである。
2025年秋、雑誌『Voice』(PHP研究所)の仕事(2025年12月号)で、同年3月に刊行された邦訳本『競争なきアメリカ』(みすず書房)の著者である、ニューヨーク大学のトマ・フィリポン教授にインタビューをした。
彼は、故郷のフランスに帰っているので、Zoomで取材してほしいと言う。当日、つないだ画面の向こうで彼がいたのは、とある家の仕事部屋だった。
そこで、出だしにそこはどこか聞いたところ、母方の実家だという。何をやっているのかと尋ねると、子どもを1カ月、ニューヨークから連れてきて親戚と遊ばせているとのこと。そうしたまさに他愛もない話が3、4分続いた。
そして、そこから本題に入っていたところ、すっかり「氷が解けていた」のか、彼は少しフランス語訛りの英語で、次々と鋭い意見を聞かせてくれたのだ。

