中道大敗の原因は「高市批判」に集中したこと

高市早苗首相が勝負に出た解散総選挙は歴史的な大勝利で幕を閉じた。自民党単独で議席の3分の2を占め、すべての委員会で委員長を出しても過半数を得られる「絶対多数」を大きく上回ったほか、参議院で否決された法案も再可決して成立させることが可能になった。日本維新の会との連立継続で、憲法改正発議も視野に入る。かつてないほどの強大な権限を得た。

メディアのインタビューに答える自民党総裁の高市早苗首相=2026年2月8日、東京・永田町の党本部
写真提供=共同通信社
メディアのインタビューに答える自民党総裁の高市早苗首相=2026年2月8日、東京・永田町の党本部

大勝の要因は、国民の多くが高市首相に「現状打破」を期待したからに違いない。台湾発言を巡る中国の過剰なまでの反発に毅然とした姿勢で臨んだことで、これまでの「弱腰外交」が変化したと溜飲を下げた人が多かったのだろう。歯切れの良い物言いは、若年層世代の有権者にも響いたと思われる。高市首相ならば、閉塞感を打ち破ってくれるのではないか、という期待が盛り上がったわけだ。

選挙戦で高市氏は具体性があるかはともかく、日本の「明るい未来」を語り続けた一方、中道改革連合は高市批判に重点を置いた。この国をどんな方向に導こうとしているのか、という国民の聞きたいことに、まったく答えられなかったのが大敗の原因だろう。

いわゆるリフレ派の主張に沿った政策

国民の多くが感じている閉塞感は、景気の低迷によって生活が困窮し始めていることにある。確かに表面上の賃金は上昇しているが、それ以上に物価が上昇していて、一向に生活が豊かになる実感がない。このままでは日本はジリ貧に陥ってしまうのではないか、という漠然とした閉塞感が国民を覆っている。

筆者が講義を持つ千葉商科大学の1つのクラス118人を対象に「あなたは人生で、両親の世代に比べて、豊かな生活が送れると思いますか」とアンケートで聞いてみた。昨年末のことだ。回答した109人のうち、「親世代よりかなり豊かになると思う」と答えたのが7人(6%)、「やや豊かになると思う」が32人(29%)だったのに対して、「やや貧しくなる」が43人(39%)、「かなり貧しくなる」が11人(10%)だった。「同程度の豊かさを維持できる」は15人(14%)で「分からない」が1人(1%)だった。

「やや貧しくなる」が回答としては最も多く、「かなり貧しくなる」と合わせるとほぼ半数になった。将来を悲観するというほどではないにせよ、漠然とした不安を抱えていることが分かる。そんな若年層の票を確実に吸い寄せていた。

「日本列島を、強く豊かに。」というのが今回の選挙での高市自民党のキャッチフレーズだった。「豊かにする」という言葉に多くの有権者が反応したのだ。では、どうやってそれを実現するのか。高市首相は「責任ある積極財政」でそれを実現するとしている。安倍晋三内閣の際にアベノミクスの3本の矢の2本目として掲げた「機動的な財政政策」の復活とも言え、アベノミクス時代に影響力を持った、いわゆるリフレ派の主張に沿った政策である。