「日本の株価は上がっていない」と見ることもできる
こんな見方もできる。「金(ゴールド)の小売り価格」で日経平均株価を割って、「金建て」の日経平均を計算してみるのだ。アナリストなどはよく「ドル建て」の日経平均を使って日本株を見ているが、ドル自身も劣化している。また、米国政府はドル安政策をとっているので、円ドル為替レートは円の実力を表していることにはならない。
「金建て」の日経平均は、高市総裁の就任時を100とすると、2月6日は87.7である。円建てでは2割上がっているのに、金を基軸に見ると、1割以上下がっている事になる。
総選挙後の株価を反映して計算しても、2月10日現在で円建て日経平均126.0に対して金建て日経平均は91.8でまだ総裁就任時に達していない。実態価値として日本の株価は上がっていないと見ることもできるわけだ。
もうひとつ、円の実力を示す指標がある。日本銀行が毎月発表している実質実効為替レートだ。1970年の数値公表以来、過去最弱だった2024年7月の水準に近づいている。2020年を100とした指数で、最も円が強かったのが1995年4月の193.95で、2024年7月は68.28、最新の2025年12月は68.82だ。この指数で見ても、円が劣化しているから、株もマンションも宝石も、円建ての資産価格は爆上がりしていることが分かる。
格差がどんどん大きくなっていく
もちろん、こうした資産価格の上昇が消費に結びつき、経済の好循環を巻き起こす可能性もある。一方で、円の劣化が続けば、物価が上昇するほか、信用の毀損から日本国債の信用劣化につながり、金利が上昇する。すでに自民党大勝後、新発10年物国債の利回りは前週末比0.045高い2.270%に上昇している。
さらに資産価格の上昇は、株式やマンションを持つ「持てる層」には円建て資産を増やすという効果がある。一方で「持たざる層」にはその恩恵がないどころか、不動産価格の上昇で家賃が上がるなど物価上昇の影響を大きく受ける。実質賃金のマイナスが続けばなおさら生活は困窮する。「持てる層」と「持たざる層」の格差がどんどん大きくなっていくわけだ。これは決して良い社会とは言えない。
生活困窮を救うために、言われている「消費減税」を実行に移せば、さらなる財政悪化が懸念され、円の劣化に拍車をかけかねない。
高市首相が目指すように、積極財政によって経済成長に火が点くのが先なのか、円の劣化によって物価上昇が続き、国民生活が一段と困窮することが先なのか。サナエノミクスの壮大な実験が始まろうとしている。


