気になる「アースビュー」

地下に住んだら地球は見えるの? という点が気になる。それは場所による。マリウス丘や「静かの海」近辺で発見された縦孔は月の赤道近くにあり、縦孔の底から見上げれば、地球が見える可能性がある。一方、極近くだと地球は見えにくくなる。

月の家の人気度は地球が見える位置にあるかどうか、つまり「アースビュー」かどうかによるかもしれない。地球を見られない場所に住む場合は、月面に置いたライブカメラがとらえたリアルタイムの地球や星空の映像が、リビングルームに投影されることになるだろう。

アポロ11号がとらえたアースライズ(地球の出)
提供=NASA
アポロ11号がとらえたアースライズ(地球の出)

「空気との戦い」も忘れてはならない。1気圧の空気で満たした家の外は真空、つまり0気圧の月面が広がる。気圧の差によって、壁には台風がまともに直撃するほどの力がかかるらしい。具体的には、家の中から外に向かって1cm角の場所に約1kgという巨大な力が働く。

野球の試合観戦などで、東京ドームに行ったことがあるだろうか? 東京ドームはしぼまないように、内部の気圧を外の気圧よりわずかに(0.3%)上げている。少し加圧しているだけで、回転ドアで中から外に出る時に押し出されるような力を感じるそうだ。0.3%の気圧差でもそうなのだから、1気圧の差は相当だろう。

対策は、壁を二重の構造にすること。例えばドーム状の建物で人が住む内側は1気圧にする。その外側に0.5気圧の空間を作って植物を植える。植物は1気圧でなくても育つ。0.5気圧ずつ分散させれば、受ける力はだいぶ小さくなるはずだ。

メリットは「月の大地に建てられる」こと

ここまで読むと、月に住むのは大変そうと思うかもしれない。だが、月ならではのメリットがある。それは月面という「大地」があること。そして「重力があること」だ。

無重力状態だと、人も建物もぷかぷか浮かんでしまう。でも月では、地盤の上に物を建てられる。

「僕らが自信をもって地球で建てている技術が必ず応用できる。地盤の性質が違うだけ。月の重力は小さいから、地球上より大きな物を作りやすいというメリットもある。宇宙船を作れと言われてもなかなかできないけど、月という条件で建築物を作れと言われたら、できる自信はあります」。TSXリーダーの佐藤達保さんは力を込める。

月面にはNASAのアポロ宇宙船や日本の月着陸機CLIMなどが着陸しているが、月の地下数mの地質や地盤についてはあまりわかっていないようだ。土木学会誌(2025年5月号)によると、月の表面を覆う砂レゴリスは粒形が非常に細かく、小麦粉とほぼ同じ大きさで、乾燥している。月表面はふかふかだが、少し深く入るとカチカチになるらしい。

ただ崩れやすさはどうか、土を盛った時にさらさらと崩れてしまうのか、それとも盛ったままの状態を保つのか、などわかっていないことが多い。そこで内閣府が中心となり、月の地盤調査を予定している。