起床直後に「ポジティブな記憶」を思い出す効果
自己啓発部門賞に輝いたのは『科学的に証明された すごい習慣大百科』でした。
著者の堀田秀吾さんは、作家としても活躍する言語学者。『図解ストレス解消大全』など、科学的な知見を一般の読者にもわかりやすく噛み砕いて伝えるスタイルで、多くの支持を集めています。
本書のテーマは「習慣」。習慣があらゆる物事の成否を握るとしたうえで、仕事の効率化、勉強、健康、コミュニケーション、メンタル、生活の6章に分け、日常の悩みを解決する112の習慣を紹介しています。
中でも、明日からすぐ取り入れたいのは、起床直後に「楽しかったこと」を思い出す習慣です。
本書によれば、朝はストレスホルモンの分泌量が1日のなかで最も高く、ストレスが生じやすい時間帯。そこで、起床直後にポジティブな記憶を思い出すと、ストレス反応を和らげる効果が期待できるそうです。実際、ある研究では、楽しかった出来事を想起した被験者において、ストレスホルモンの減少や、自己否定的傾向の長期的な低下が確認されています。
このように、本書には今すぐ・お金をかけずに実践できる習慣が数多く詰まっています。一つひとつ試していくうちに、気づけば毎日の生活が少しずつ明るく、前向きなものに変わっている――そんな一冊です。
これからの日本で「お金」よりも制約になるもの
リベラルアーツ部門賞は、『きみのお金は誰のため』で2年前に総合グランプリとリベラルアーツ部門賞を受賞した社会的金融教育家・田内学さんの『お金の不安という幻想』でした。
「老後のために」と、投資や貯蓄に励んでいる人は少なくないでしょう。本書は、そんな私たちが無意識に前提としてきた“お金観”を強烈に揺さぶる一冊です。
田内さんが本書で繰り返し強調するのは、「これからの日本で本当に制約となるのは、お金ではなく人手だ」という視点です。いくら資産を築いても、サービスを提供する人がいなければ、私たちは何ひとつ享受できません。お金はあくまで交換の道具であって、それ自体が価値を生み出すわけではないのです。
とりわけ人手不足が深刻化しているのは、教育、介護、交通といった、生活に欠かせない分野です。これらの仕事は社会を支えているにもかかわらず、必ずしも高収入とは言えません。その結果、老後不安が強まるほど人材は流出し、現場はさらに疲弊していきます。加えて、「お金を稼ぐ人が偉い」という価値観が、その流れを加速させている――田内さんはそう指摘します。
「お金さえあれば安心」という常識が、もはや通用しなくなりつつある日本。読み終えたとき、自分自身の老後だけでなく、この国がこれから何を大切にしていくべきなのかについて、自然と考えたくなるはずです。


