左派になく右派にある特徴の背景

この「誰にも相談しなかった」人は、「悩みごとがあるが相談できる相手がいなかった」のか、「相談したくなかった」のか、「そもそも悩みごとがない」のかを区別することができないため、注意が必要です。しかし、左派市民にはみられず、右派市民にはみられる特徴として重要なポイントではないでしょうか。

松谷 満『「右派市民」と日本政治 愛国・排外・反リベラルの論理』(朝日新書)
松谷 満『「右派市民」と日本政治 愛国・排外・反リベラルの論理』(朝日新書)

この関連の背景にはさまざまな解釈を考えることができます。そのどれがより妥当なのかはわかりませんが、仮説的にいくつか示しておきましょう。①孤独ゆえに特定の敵を見定めてさ晴らしをしたりする、という説、②孤独ゆえにブレーキが利かずに過激化する、という説。しかし、独身者が多いわけではなく、「孤独」という前提は確かではありません。

もし、「弱みをみせたくない」「悩みがない」といった理由から誰にも相談しなかったということであれば、③自尊感情やプライドが強く、何事も自分の意見が正しいと思い込みがちな性格、なのかもしれません。しかし、この説だと左右の非対称性が説明できません。左派市民にも自己主張が強い人はたくさんいるように思われるからです。

これらはあくまでも仮説的な解釈にすぎません。その因果関係の解明は、今後の研究に期待したいところです。

*1 2000年代、歴史修正主義者(本書でいう愛国主義者)については小熊英二・上野陽子『〈癒し〉のナショナリズム 草の根保守運動の実証研究』(慶應義塾大学出版会、2003年)が、ナショナリズム全般については高原基彰『不安型ナショナリズムの時代 日韓中のネット世代が憎みあう本当の理由』(新書y、2006年)がよく引用されました。ネット右翼についても、安田浩一『ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて』(講談社、2012年)が同様の議論を行っています。
*2 田辺俊介「ナショナリズム その多元性と多様性」田辺俊介編著『外国人へのまなざしと政治意識 社会調査で読み解く日本のナショナリズム』勁草書房、2011年
*3 松谷満「ネット右翼活動家の『リアル』な支持基盤 誰がなぜ桜井誠に投票したのか」樋口直人ほか『ネット右翼とは何か』青弓社ライブラリー、2019年
*4 K6は「過去30日の間にどれくらいの頻度で次のことがありましたか」という質問文に対し、「神経過敏に感じましたか」「自分は価値のない人間だと感じましたか」など6項目について回答を求めるものです。それぞれ、「全くない(0点)」から「いつも(4点)」の範囲で回答し、合計得点が10点以上の場合、うつ病や不安障害の可能性が高いとされています。厚生労働省『令和6年版厚生労働白書』第1部第1章「こころの健康を取り巻く環境とその現状」にK6を用いた調査結果が多く掲載されています。
*5 安田浩一「在特会は、『いまの日本の気分』をわかりやすく表わしたものなんです」『Voice』2012年11月号、90ページ
*6 樋口直人『日本型排外主義 在特会・外国人参政権・東アジア地政学』名古屋大学出版会、2014年、17~19ページ
*7 左派市民については、若年層の非‐伝統主義者、中年層の反‐排外主義者、中年男性の親左主義者に独身者がやや多いという関連がみられました。非‐伝統主義者は、家族や性の規範からの自由を重視しているわけですから、独身者も当然多いでしょう。中年層の左派市民に独身者がやや多いという関連はどう解釈したらよいか、やや難しいところです。

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