「天網恢々疎にして漏らさず」

強く決意して、それを守っていたのは、インチキが嫌いだったからです。とくに自分が悪いと思っているようなことは、それをやることでやましい気持ちになるので避けるべきと考えていました。

畑村洋太郎『人生の失敗学 日々の難儀な出来事と上手につき合う』(朝日新書)
畑村洋太郎『人生の失敗学 日々の難儀な出来事と上手につき合う』(朝日新書)

やりたくないことは、やらないに越したことはありません。これまで大事な場面で誘惑に駆られてつい不正に走ったり、取り返しのつかない失敗を起こすことがなかったのは、このような愚直さのお陰です。

中国の老子が残した有名な言葉に、「天網恢々疎てんもうかいかい そにして漏らさず」というのがあります。天の法の網は粗く見えるものの、決して悪事を見逃すことがないという意味の言葉です。初めて聞いたときから、不思議と頭に残っています。とくに好きな言葉というわけではありませんが、意味している内容が共感できるものだったからでしょう。

真面目にしっかりやっていたところで、世の中ではなかなかうまくいかないことのほうが多いものです。悪いことが続くと、嘆きたくなるし、真面目に生きることをやめたくなります。しかし、真面目に生きている人にはそれ相応の結果がついてくるし、逆もまた真なりです。

多くの失敗を見てきて、その思いがより強くなりました。やるべきことを愚直にやり続けることが失敗を回避するための大きな力になるし、やってはいけないことをやると、失敗を起こしやすくなるのはたしかなのです。

だいたい目先の利益ばかり考えていると、視野が狭くなり、見えるものも意識しているものも小さくなります。これでは面白くありません。大所高所に立ったほうが、世界がより広がり、豊かに生きることができます。これも多くの失敗を見ながら得ることができた教訓です。

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