一時的なおこめ券より、根本的な解決策を

コメの価格高騰は、わが国経済における供給制約の深刻化と、それによる物価上昇の一因を表している。根本的な解消には、政府が供給サイドの改革を実行し需要を満たすことが重要だ。

おこめ券などの給付措置は、根本的な物価高対策とは異なる。高市政権の物価対策が、本当の意味でインフレ進行の歯止めになるとは考えづらい。当面、国内のコメ販売価格は上昇し、物価に押し上げ圧力はかかりやすいだろう。

コメに関して、外部要因の影響も大きい。その一つは肥料価格の上昇だ。

ウクライナ戦争が勃発して以降、世界の肥料供給は不安定化し価格は上昇した。米国との対立が先鋭化し、わが国との関係も不安定化する中、中国は尿素系肥料などの輸出を停止した。中国は輸出規制によって世界の肥料、そして食料の供給不安をあおろうとしているとの指摘が多い。

米を収穫する農家
写真=iStock.com/okugawa
※写真はイメージです

物価は下がらず、家計支援にはならない

円安も、輸入する肥料、その原材料価格の上振れにつながる。物価上昇により、トラクターやコンバインといった農機具も値上がりした。コメの生産者は、コスト増加分の新米などへの価格転嫁を急ぐだろう。

主食であるお米に代わって、パンや麺類の購入を増やす消費者は増えているものの、コメの需要が明確に減少するには至っていない。コメの需要が供給を上回る状況は簡単に変化しないだろう。

少なくとも、2026年の新米の生育状況、収穫量が明らかになるまでコメの価格は上昇、あるいは高止まりする可能性は高い。仮に、2026年の新米の生産が政府の予想を上回ると、コメの価格は幾分か落ち着くことが期待できるかもしれない。

コメの価格上昇は、わが国の消費者物価の上振れ要因になり、日本銀行の金融政策に影響する。おこめ券の配布で一時的に家計の負担が部分的に軽減されることがあったとしても、高市政権の物価対策がわたしたちの暮らしの改善につながるのは難しそうだ。

【関連記事】
習近平が最も恐れる展開になる…高市首相が切り出せる「日本産水産物の輸入停止」への3つの対抗手段
高市早苗氏でも、麻生太郎氏でもない…「まさかの自公連立崩壊」で今もっとも頭を抱えている政治家の名前
パンと白米よりやっかい…糖尿病専門医が絶対に飲まない"一見ヘルシーに見えて怖い飲み物"の名前
「共感できる部分はない人間、それが私の母」要介護3の88歳をフルで働きながら6年以上ケアする娘の"介護魂"
「出光は社員を1人もクビにしない」経営難でも1000人以上を雇い続けた出光佐三の不動の"経営哲学"