自治体に丸投げの「おこめ券」
わたしたちの主食である、コメの価格の上昇に歯止めがかからない。物価対策を重視する高市政権は、消費者支援策の一つに“おこめ券”を発行する方針という。政府の狙いは、おこめ券の配布で家計がコメを買いやすくし、生活費の負担を軽減することだろう。
実際のおこめ券の扱いは、自治体に委ねられている。大阪府交野市や東京都中野区などは、おこめ券配布のコストなどを理由に発行を見送った。「実際の業務は自治体に丸投げ」との指摘もある。また、「鈴木憲和農相の政策実行に逆風が吹いた」との見方も多いようだ。
確かに、おこめ券の発行が行われる地域で、一時的に、コメが買いやすくなったと感じる人は増えるだろう。ただ、おこめ券は使ってしまうとそれで終わり。長い目で見た効果は期待しづらい。
本当に物価を下げる気があるのか?
むしろ、複雑な流通経路の効率化で、コメの価格を安定的に引き下げる取り組みのほうが重要との指摘は以前からあった。今回の高市政権の政策では、そうした施策は見られない。政権に、どれだけ本気で物価高を抑える意識があるのか、疑問視する専門家もいる。
政府は、長い目で見て、コメの供給制約を緩和するため、より効率的な収穫を可能にする農機具の購入を奨励するなどの方策を取ることも検討すべきだ。
いずれにしても、一時しのぎの政策に多額のコストをかけるのは、効率的な政策運営とは言えない。今後、政府は、本気で物価上昇に歯止めをかけることを考えてほしいものだ。

