小泉備蓄米の効果は長続きしなかった

近年、わが国のコメの販売価格は一貫して上昇傾向にある。2025年6月中旬から7月下旬にかけて、小泉進次郎前農相の備蓄米放出拡大策で、ブレンド米の流通割合が過半数を占めるまでになった場面はあったものの、その効果は一時的にとどまっている。

当時の小泉農相は、備蓄米の放出方法を一般競争入札から、随意契約に切り替えた。それにより、コメの供給量は一時的に増加した。一時、5キロ当たり3500円台までコメの価格は下落した。

ただ、その効果は長続きしなかった。その後、コメの販売価格は再度、上昇が鮮明化した。12月上旬の時点でも、依然として上昇基調にある。農林水産省のデータによると、12月1日から7日の週、全国平均の販売価格は5キロ当たり4321円だった。高市政権が発足した週と比較すると2.6%ほど高い。

同じ週、銘柄米は4469円、ブレンド米(備蓄米などをブレンドしたコメ)は3969円だった。いずれも上昇傾向を辿っている。新米に関して、5キロ当たり5000円台で販売されているブランドも多い。

スーパーの担当者と話をすると「仕入れの価格は下がっていない。小売価格を引き下げることはかなり難しい」との声を耳にする。一部では、価格が高すぎ、相場調整リスクを警戒する業者もいるが、今のところ価格調整は実現していない。

コメの流通構造は「複雑怪奇」

コメ価格上昇の要因の一つは、わが国のコメ流通市場の不効率性にある。5次にわたる重層的な卸売業者の存在をはじめ、わが国のコメ流通構造は複雑、非効率的だ。それに対して、高市政権は市場構造を抜本的に改革する姿勢を示していない。

高市政権はコメの増産にあまり積極的には見えない。農林水産省は、本年のコメの生産量の増加を反映し、2026年のコメ生産目安を711万トンに設定した。本年の見込み量(748万トン)を下回る。そうした事態を「事実上の減反再開」と指摘する農業政策の専門家は多い。高市政権は、放出済みの備蓄米59万トンを買い戻す方針でもあるようだ。

供給制約が残る中、仕方なく価格上昇を受け入れる消費者は増えているようだ。家計調査による購入数量の推移を見ると、コメの需要が急減する状況にはなっていない。今年の新米発売開始時期の購入数量は、昨年よりも多かった。「多少高くてもいいから美味しいコメを食べたい」という意識は高まり、価格の追加的上昇を受け入れる消費者は増加傾向と考えられる。