「複数のルート」は進展なしの言い訳だ
11月15日は、新潟県の中学生だった横田めぐみさんが北朝鮮に拉致された日である。今年で48年になる。高市早苗首相は、就任後すぐに北朝鮮の金正恩総書記に首脳会談を打診するなど、拉致問題の解決に前向きな姿勢だ。米国のトランプ大統領も10月に来日した際に、拉致被害者の家族と面会し「できることはすべてやる」と語っている。しかし、本当に解決に向けて前進しているのだろうか。
北朝鮮との交渉において、外務省から時折「複数のルートでアプローチしている」という声が聞えてくる。これは、「複数のルートでアプローチしているが、進展はしていない」と同じ意味ではないだろうか。北朝鮮側ときちんと接触できているのであれば、ルートは一つでよいはずである。
小泉(純一郎首相)訪朝の際も、外務省は「ミスターX」などと言っていたが、実際には官邸サイドが日本財団の笹川陽平氏を通じて話を進めて実現にこぎつけた。2回目の小泉訪朝からも21年が経過している。本当に複数のルートでアプローチしているなら、何らかの成果がなければおかしい。2013年には、私自身が個人的なルートで訪朝して、当時の北朝鮮ナンバー2金永南最高人民会議常任委員長と会談したが、残念ながら政府間の交渉は立ち消えになってしまった。外務省は本気で拉致問題に取り組む気があるのだろうか。
もう一つの懸念は、世論の関心の低下である。たしかに、永田町を歩いているとブルーリボンのバッジをつけている人をよく見かける。これは、拉致被害者の救出を求める国民運動のシンボルで、「救う会:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」のウェブサイトで、1個500円(申し込みは2個以上から)で販売しているものらしい。今でこそ、バッジが普及しているが、救出運動が始まった当初は、普通の青いリボンを安全ピンでとめている人も多かった。
ただ、私の感覚として、ブルーリボンのバッジが増えているほどには、運動の盛り上がりが感じられない。バッジをつけたことで満足して、新たに活動を起こすまでに至っていないのではないか。SDGsの17の目標の色を配色したバッジも近いような気がする。みんなバッジをつけているが、SDGsの目標達成に向けて具体的に動いている人がほとんどいないのと同様である。国連本部オンラインショップで販売されているバッジは10個35ドル(約5400円)だから、価格もブルーリボンバッジとほぼ同じだ。
私は長年北朝鮮問題に対して尽力してきたが、これまでブルーリボンバッジをつけたことはない。バッジをつけるより、行動で示すべきだと考えているからだ。しかし、これほど成果が何もないと、むなしくなる瞬間がある。
そもそも拉致問題は、何をもって解決とするのだろうか。政府が認定した17人の被害者全員の帰国を一つのゴールとしても、北朝鮮側の主張では、すでに死亡とされたり、北朝鮮への入境そのものが否定された人も含まれていて、「全員帰国」のハードルは非常に高い。
このほか、政府は認定していないものの、かなりの数の拉致の疑いがある「特定失踪者」もいる。小泉訪朝で帰国が実現した曽我ひとみさんのように、日本政府が把握していなかった拉致被害者もいれば、特定失踪者リストの人物が日本国内で発見される例もあった。拉致の「被害者」全員を特定するのも非常に難しいのである。日朝首脳会談の前に、まずは解決に向けての課題を日本国内で整理すべきではないのか。そうした動きや言説が見えてこないにもかかわらず、ブルーリボンバッジをつけている人が多い。ここが、私が不安に感じているところである。
私の率直な気持ちを言えば、日本から北朝鮮に対して「拉致問題の解決を協議しましょう」と呼びかけることには賛同できない。これまで20年間進展がなかったのだから、北朝鮮側が自ら「拉致問題解決」を持ち出すようにするのが理想だと考える。北朝鮮が日本に協力を求めざるをえないような状況をつくり出すことが理想だと思っている。困難なミッションではあると思うが、高市首相にはぜひチャレンジしてほしい。
国会議員が着用している議員記章と、ブルーリボンバッジ。ブルーリボンバッジの着用者は永田町で増えているというが、飯島氏は「バッジをつけた人が増えても、解決に向けた議論が盛り上がっているとは思えない」と、さみしそうな顔を見せた。
制裁の前に国内で議論が必要だ
北朝鮮は豊富な地下資源を有している。中でもレアアースは中国に次ぐ埋蔵量と推測されており、それがほとんど手つかずで残っている。トランプ大統領の北朝鮮への関心もこれが理由ではないか。もともと北朝鮮と関係が深い中国や、ウクライナとの戦争を通じて急接近したロシアも、北朝鮮の地下資源を狙っているだろうが、現在の国際情勢を鑑みれば、特定の一国だけで北朝鮮の開発を引き受けることになるとは思えない。
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