裁判が終わるころ任期も終わるのでは

11月9日に投開票された茨城県神栖市長選は、なんと2人の候補者が全く同じ1万6724票で並び、くじ引きで新人の木内敏之候補の当選が決まった。無効票が219票あることから、くじで敗れた現職の石田進氏は早速、異議申し立てを行い、再集計を求めている。再集計の結果によっては裁判に発展する可能性もあり、最終的な結論が出るのは、市長の任期が終わるころになってもおかしくない。

得票数が同数となった場合、くじ引きで当選者を決めるという仕組みは、公職選挙法第95条2項に定められている。「同数の場合はくじ引きで当選者が決まる」ということ自体は私も議員秘書時代に知り、その際にどう対応すべきかというシミュレーションは行ったものの、私が関わってきた国政選挙では遭遇する機会がなかった。しかし、地方議会選挙ではこの同数当選がしばしば起きているようだ。これは一例だが、思ったより頻繁に起きている。

2021年 千葉県旭市議選
2019年 神奈川県相模原市議選
2019年 埼玉県狭山市議選
2018年 佐賀県有田町議選
2017年 島根県飯南町議選
2010年 青森県大鰐町長選

相模原市や狭山市など、比較的人口が多い自治体でも、くじ引きが行われていることに驚いた。公選法で決められているとはいえ、くじ引きによる決着で、地域にわだかまりは残らないのだろうか。

一票の重みで思い出すのは、私のふるさと長野県における、長野市と松本市のライバル関係である。歴史を振り返ってみると、1871年の廃藩置県後、信州には14の県ができたが、その後の統廃合で旧長野県を中心とした長野県と現在の松本市を中心とした筑摩県の2県に絞られた。1876年、筑摩県を長野県に統合することになり、県庁所在地を長野と松本のどちらにするかで意見が真っ二つに割れた。明治新政府が武士の町であった松本を嫌って長野に決めたといわれているが、私の地元では、長野派が入院中の議員を戸板で議場に運んで、長野市に投票させて一票差で勝ったという説が伝わっている。そして、現代でも松本市民はその結果に納得していないのである。当時のことを具体的に知る人はいなくなっても、そうした風潮は緩やかに残っている。一票差での決着というのはそれほど重いのである。

だから、長野市を中心とした北信の出身者と、松本以南の中信・南信の出身者が東京で出会って同じ信州人だからと意気投合しても、「信州のどこ出身?」という話題が出ると、一瞬で気まずい雰囲気が流れるのが常である。こうした対立を嫌った軽井沢や上田といった地域の出身者は「東信です」と名乗って距離を置いている。ちなみに私の故郷である辰野町は南信だ。

今回の神栖市の場合は、219票の無効票があることも、くじ引きで敗れた側が納得できない理由の一つだろう。どうしても手書きの投票だと読み取れない悪筆の人がいて、無効票となるケースは避けられない。電子投票の導入で無効票を減らすというのも一つの手段かもしれない。

実は、2002年に電磁記録投票法が施行されていて、法的には電子投票は可能となっている。ただ、システムの問題で投票ができなくなるなどトラブルが頻発し、選挙が無効となる例もあり、なかなか広まっていないのが実情だ。法令ができてからすでに20年以上がたち、IT技術は飛躍的に進化しているから、多くの自治体にチャレンジしてもらいたい。

政治家の「正解」は死後にしか出ない

しかし、地方選挙では立候補者の減少傾向が続いていて、無投票当選者の割合がどんどん増えるという問題も起きている。同様に、定数割れの議会も増加傾向にある。

2023年の統一地方選にて、東京都中央区長選挙の無投票を知らせる掲示
候補者不足
2023年の統一地方選にて、東京都中央区長選挙の無投票を知らせる掲示。地方選挙では立候補者の減少により、無投票当選や定員割れも散見されるが、その対策としての議員歳費増額に、飯島氏は反対の立場を示した。

地方議員の成り手不足問題の原因として、議員報酬が安すぎるという声がよく聞かれる。特に、月額の手取り報酬が15万円程度の町村議員など、それでは暮らしが成り立たないというのだ。実際に、報酬の増額を検討する議会も出てきている。

(写真=時事通信フォト)

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