仕事にスマホに、いつも何かに追われているような現代人。茶道教授の竹田理絵さんは「たった5分のお茶時間が、散らかった思考を整え、ストレスでこわばった心をふわっと緩めてくれる」という――。
※本稿は竹田理絵『一日5分で自分をリセットする ひとり茶道』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
「こんなに心が落ち着くとは…」
一日の始まりに、ほんの少しの静けさを。一日の途中に、ふっと肩の力を抜く余白を。一日の終わりに、すべてをリセットする温もりを。
ストレスとは、多くの場合、思考が未来や他人に奪われている状態です。ひとり茶道は、正解も評価もなく、あるのはただ自分を整えるという癒しの時間です。自分の呼吸に気づいたとき、ストレスでこわばった心をふわっと緩めて、心と体を今に引き戻してくれます。
茶筅の音、湯気、器のぬくもり。五感をゆっくりと感じるうちに、呼吸が自然と整い、心の波が穏やかになっていくのです。それはまるで、小さな瞑想の時間のようです。
茶道は禅と同じ時期に中国から日本に入ってきました。なので、茶と禅の根本は同じという意味で、茶禅一味ともいわれ、茶道は動く禅ともいわれています。
先日、20代の女性の生徒さんが、帰りがけに同僚に声をかけたそうです。
「最近、どう? 忙しそうだけど」
「もう残業続きで、頭のなかがグチャグチャで、心身ともに疲れ切っているわ」
「じゃあ、これでお抹茶を点ててみて。動かすリズムが、心を落ち着かせてくれるよ」
と、ちょうど買ったばかりの茶筅を持っていたので、貸してあげたそうです。
翌日会った同僚に、晴れやかな笑顔で、「すごいね。お茶って、こんなに心が落ち着くとは思わなかった。さっそく、茶筅を買って、これからもお茶時間を楽しむわ。どうもありがとう」と、とても感謝されたそうです。

